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「PCM」――近々ブレイク?のメモリデジモノ家電を読み解くキーワード

DRAMは高速だが、電源を切ればデータは消える。フラッシュメモリは電源を切ってもデータは残るが、速度はDRAMにかなわない。今回は、双方のすき間を埋める存在となりうる次世代メモリ「PCM」を取りあげる。

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DRAMとフラッシュメモリの「中間」

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DRAMより省エネでフラッシュメモリより高速な不揮発性メモリ「PCM」(画像は2008年にIntelとSTMicroelectronicsが共同開発した試作品)

 わたしたちが普段「メモリ」と呼ぶデバイスには、大きく分けて2つの種類があり、それぞれ一長一短の特性を持つ。もっとも広範囲に使用されているDRAM(Dynamic Random Access Memory)は、アクセス速度などパフォーマンスに優れるが、消費電力が多く電源が切れるとデータが消えてしまう(揮発性)。小型機器に採用例の多いNAND型フラッシュメモリは、電源が切断されてもデータは残る不揮発性で製造コストが低く、データの運搬に適しているが、パフォーマンスの点でDRAMに見劣りする。

 そこでいま注目を集めているのが「相変化型メモリ」(Phase Change Memory:PCM)。製造コストの低さはNAND型フラッシュメモリに及ばないものの、DRAMに比べれば有利。読み取り速度はDRAMなみとされ、NAND型フラッシュメモリを大きく超える。書き換え寿命についても、NAND型フラッシュメモリよりはるかに上。DRAMとNAND型フラッシュメモリに譲る部分はあるが、両者の中間としての存在価値および需要は確かだ。

バランスのよさが利点

 エンジニアがデジタルデバイスを設計するときには、性能とコストのバランスを重視する。そのバランスという観点から、PCMが注目される理由を考えてみよう。

 1つは、パフォーマンスを大きく落とすことなく電力消費量削減を図れること。DRAMの代替としてPCMを採用すれば、20%前後の消費電力を削減できるともいわれることから、結果としてバッテリー寿命の向上に貢献する。

 もう1つは、不揮発性の獲得。揮発性のDRAMは電源オフとともにデータは消えるが、PCMはフラッシュメモリ同様に電源オフ後もデータを保持できる。しかも、書き込み時のレイテンシはNAND型フラッシュメモリの100分の1程度と、パフォーマンス的にも有利だ。

 PCMのもうひとつの強みとして、微細化が比較的容易ということが挙げられる。PCMの記憶素子に使われるカルコゲナイドは、熱を加えると抵抗レベルの異なる2種類の結晶構造のうち一方に変化し、その違いで0か1かを区別するため、原理的に微細化しやすい。

フラッシュメモリの置き換えはしばらく先

 PCMが搭載されるデバイスだが、当面は携帯電話とスマートフォンが有力視されている。生産コストがNAND型フラッシュメモリに比べ高いため、代替が進むとすればNOR型フラッシュメモリ(NAND型に比べ高速なランダムアクセスが可能、ハイエンド向け)からで、市場の大きいNAND型フラッシュメモリはその次となることが予想される。いずれにせよ量産化は今年開始されたばかり、来年以降の動きに注目だ。

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