アップルの“テレビ的な何か”、年内発売はない?:本田雅一のTV Style
今年が始まる頃、9月以降にはアップルがテレビを発売すると信じられていた。しかし、9月が目前に迫ったこの時期、どうやら今年(そして来年の前半も)の発売はない、ということが明らかになってきた。
今年が始まる頃、9月以降にはアップルがテレビを発売すると信じられていた。実際、アップルがテレビ(あるいはテレビ的な大きなディスプレイを持つ何か)を開発していることは、業界内では周知の事実といえるほど定着した話だったし、故スティーブ・ジョブズ氏も開発・販売する可能性に言及したという記事を見たことがある方もいるだろう。
しかし、9月が目前に迫ったこの時期、どうやら今年(そして来年の前半も)の発売はない、ということが明らかになってきた。アップルの年末に向けた製品リリースのスケジュールが漏れ伝わってきているが、そこにはテレビと思われる製品はないようだ。
すでに漏れ伝わっているように、新型のiPhoneは9月12日に発表となり、米国では21日に発売されると予想されている。KDDIの動向は分からないが、ソフトバンクモバイルは22日の発売を目論んでいると噂されている。
この時、現在のiPod/iPhoneコネクターが、より小型で高速通信をサポートしたものに更新されるため、iPod/iPhoneコネクターを採用している製品がマイナーチェンジを受ける。”新しいiPad”はスペックはそのままに、9月の新型iPhone発表時にコネクターだけが新型に更新される。こちらは1カ月以上前から中国で生産が始まっているため、9月12日に製品の切り替えが行われる確率が高い。
新型iPhoneの発売日は9月21日と目されているが、その後、10月以降も新製品スケジュールが目白押しだ。iPodの新型(touchとnano)の投入があり、さらに11月発売と噂されている7インチサイズの小型iPadが発売されると考えられている。細かな発売時期は明確ではない(完成品生産が始まっていないためスライドする可能性がある)。
これらiOSデバイスに加え、例年の年末商戦に向けた製品アップデートで、MacBook ProあるいはMacBook Airの13インチRetina Displayを搭載するモデルが加わるようだ(サムスン、LG、シャープからの同時調達とのことなので、かなりバッテリーサイズが大きくなるだろう。よってMacBook Proになるとの予想が多いようだ。
さらに噂レベルではiMacのRetina Display搭載という話も聞こえてくるが、こちらは部品となるディスプレイパネル出荷などの話は聞いていないため、現状ではあくまでも噂レベルだと思われる。
さて、こうして並べてみるると、アップル製テレビの話題がどこにもないことが分かるだろう。どうやら”テレビ的な製品”の発売は、継続して検討はされているようだが、年内に発売されることはなさそうだ。
アップルがテレビ、あるいはテレビに近い位置付けの製品を発売する条件として考えられるのは、iTunes Storeを通じてネット経由での映像流通が確立できることだろう。現在、アップルが独自に実装してiTunesと統合しているApple TVが、もっと幅広く受け入れられるものになるかどうかが鍵だ。
”テレビ”で放送するコンテンツには地域性があるため、アップルがテレビの置き換えを狙った製品を作るとするなら、北米市場の特性に合わせたものになるだろう。インターネットでの映像流通に対応し、各種アップル機器とのAirPlayに対応するのはもちろん、ケーブルテレビ会社や通信事業者と組んでIP放送の企画を提案しようとするだろう。放送と通信の融合に規制が入ったままの日本では不可能でも、米国発で事例を作り、欧州で展開ならば不可能ではないかもしれない。
ただし、米フォーチューン誌の記事(http://tech.fortune.cnn.com/2012/08/24/message-from-apple-execs-no-tv-solution-any-time-soon/)では、まだ時期尚早とのアップル幹部のコメントが紹介されている。もっとも時期の問題ではなく、放送事業者や通信事業者が、アップルが好むような急進的な方法で既存のビジネスモデルを損ねることを嫌っていることが、話が進まない最大の理由という印象だ。
別途、ケーブルラボが主導するAndoridベースのIPTV端末規格が進んでおり、「フリスク」(タブレット菓子)と同等サイズの端末も開発されている。日本でも”フリスクTV”が年内にも発売されると聞いており、既存テレビにHDMIで接続するIP端末としてサービス事業者が無償配布というアイデアも出ているという。
アップルのユーザーインタフェース技術とサービス連動性の高いシステム構築なら、高い競争力を持てるとは思うが、しかしイノベーションを引き起こすには、まだ数段の工夫が必要だろう。
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