「ICC LED-TV」でサッカーが見たい:CEATEC JAPAN 2012(2/2 ページ)
「CEATE JAPAN 2012」の展示で、「これだけは見ておきたいもの」を1つ挙げるなら、シャープの「ICC LED-TV」をお勧めする。
1つは、動きのある映像について。近藤氏によると、昨年の「CEATEC JAPAN 2011」で見せた桜の木には、花びらが舞い落ちるシーンがあった。「あれは一般的なパンの数倍の速さで移動する動体であり、しかも(角度が変わるため)変形する難しい映像だった」。動体の表示については問題ないという認識だ。
もう1つは、映画のように“制作者の意図”でボカすケースもある映像について。ICCの映像は、パンフォーカスの写真のようにすべてクリアに見えるが、それが作品性を阻害する可能性はないのだろうか。しかし近藤氏は「人間の目は、焦点の合っていない部分は自然とボケるため、問題ない」と話す。「既存の超解像技術は、ピントが合っている部分のみを精細に見せるだけ。それは(ICCでも)当たり前にできている」(近藤氏)。
パネルに対する2つの要望
これだけの緻密(ちみつ)な処理が加えられると、それを表示する液晶パネルにもシビアな性能が求められる。通常のテレビは、パネルの特性に合わせて信号処理に手を加えるものだが、今回は「目指すゴールに向け、信号処理もパネルも合わせ込む」と両面から開発を進めたという。このため、当初販売されるICC LED-TVは60インチに限定される。
60インチを選んだのは、横1200ミリ、縦90ミリの画面の中に800万の画素があるからだ。「60インチの4Kパネルは、1ミリ四方の中に3×3画素がある。800万画素を堪能するなら、1ミリあたり3画素、3本の走査線が必要になる」と近藤氏。振り返れば、当初「ICC 4K-TV」を打ち出していたシャープは、いつのまにか「ICC LED-TV」と呼び方を変えた。これは、仮にICCを搭載したテレビのラインアップが増えたとき、4K以上の解像度が求められるからではないか。あるいは“4K”という技術トレンドだけで語られることを嫌ったのかもしれない。
それはともかく、パネルに対する要望は、画素密度だけではなかった。近藤氏は、シャープに対して大きく2つの要望を出したという。1つは画面輝度の均一性で、それに応えるためにICC LED-TVではバックライトのローカルディミングを行っている。通常のテレビでは「黒を締める」とか、「動画ボケを防ぐ」といった目的で行われる技術を、単に均一に光らせるためだけに使っているわけで、かなりぜいたくな仕様だ。
もう1つの要望は、外光の影響を極力受けないようにすること。視聴時の室内環境は予想できないが、映り込みなどは排除する。映り込みといえば、シャープブースで展示されていた「モスアイパネル」が頭に浮かぶが、今回のデモ機では使っていないという。
ICC LED-TVの最適な視聴距離は2〜3メートルで、近藤氏によれば「脳内にストレスなく映像が浮かぶ距離」だという。また60インチで2〜3メートルといえば、人が臨場感を感じ始めるサイズと距離でもある。ICCの効果を合わせたとき、映画やスポーツ中継、そのほかのテレビ番組は一体どう見えるのだろうか。
「4Kとか、超解像とか、技術トレンドの話ではない。ICCは、テレビのカラー化に続く、次の進化だ」と胸を張る近藤氏。やはり、早く製品が登場し、さまざまな映像を見られるようになることを期待したい。
なお、シャープでは近日中に「ICC LED-TV」の発売スケジュールを改めて発表するという。「IFA 2012」の際、欧州では2013年7〜9月期に提供するとアナウンスがあったが、日本では一足早く登場することを期待したい。
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