「これ、フツーのヘッドフォンですよ」、「DTS HEADPHONE:X」が結構すごい(2/2 ページ)
米DTSが「2013 International CES」で披露したヘッドフォン向けの新しい音響技術「DTS HEADPHONE:X」を体験した。ちょっと驚いた。
同社では、DTS HEADPHONE:Xの詳細は明らかにしていないが、お得意のポストプロセッシング技術の成果であることは確かだ。しかも、「現在は最大11.1chとしているが、技術的にはもっと増やすこともできる」という。さらに仮想スピーカーまでの距離感もシミュレート可能。今回のデモ環境では、本物のスピーカーの位置に合わせて音源に調整を加えたという。
そう、先にスピーカーの音を聞かせたのも、外の音が聞こえる開放型ヘッドフォンを使ったのも、すべて「あれ? スピーカーから音が出ちゃってるよ」と体験者に誤解させ、事実を知ったときの驚きを引き出す演出だった。まんまと引っかかってしまったらしい。
デモの演出はともかく、ヘッドフォンで体験する11.1chは非常に興味深いものだった。普段、ヘッドフォンやイヤフォンで音楽を聴くと、音像は頭の中に定位して聞こえるのが普通だ(脳内定位)。しかしDTS HEADPHONE:Xでは、スピーカーの位置を錯覚させるほど離れた場所に定位する。技術発表時の資料に「サウンドを“外面化”する」とあって首をかしげた記憶もあるが、体験して意味が分かった。余談になるが、ヘッドフォンを使わない人の中には「脳内定位が苦手」という人もいるので、この技術は2chオーディオにも応用できるかもしれない。
まずはVoD、ゲームに
DTSでは今後、2つの市場に向けてDTS HEADPHONE:Xを訴求していく。1つは動画のネットワーク配信サービスで、テレビ向けのほか、スマートフォンやタブレット向け動画配信も視野に入れている。「Home theater in your Pocket」(HTiP)というコンセプト通り、実現すれば手元のスマートフォンとヘッドフォンだけでシアター並みのサラウンドを楽しめるようになるかもしれない。
ただし、この場合は出口となるデバイス(STB、スマホなど)にポストプロセッシング技術を導入するほか、コンテンツ側にも事前処理が必要になるという。同社では、「オーサリングについては、DTS-HD Master Audio Suite(DTSが販売しているエンコーダー/オーサリングソフト)のプラグイン的な方法で提供したい」と話している。
一方、DTSではゲーム機もターゲットにしている。こちらはデバイスの持つ高い処理能力を生かし、コンテンツの前処理なしでサラウンド化が可能になるという。既にモバイル機器のチップメーカーやゲームメーカーとの交渉は始まっており、CESでもクアルコムのブースで「DTS HEADPHONE:X」のデモが行われたという(7.1ch対応版)。なお、具体的な対応製品の発売時期については未定だが、DTSでは「年内をターゲットにしている」と話していた。
関連記事
- 最大11.1chのサラウンドをヘッドフォンで楽しむ新技術、DTSが発表
DTSは、ヘッドフォンで最大11.1chのバーチャル・サラウンドを実現するという「DTS Headphone:X」を発表した。 - DTSのストリーミング楽曲再生技術「Play-Fi」がWindowsをサポート
DTSは、Wi-Fiによるストリーミング楽曲再生技術「Play-Fi」について、新たにWindows向けドライバーを提供すると発表した。 - 薄型テレビの音を改善するポストプロセッシング技術、DTSが開発中
DTSといえば、「DTS-HD Master Audio」に代表されるサラウンドコーデックの会社として有名だが、最近ではPCやカーオーディオ向けのポストプロセッシング(事前の信号処理)でも存在感を示している。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.