ワクワクが止まらない! 次世代技術で前進する映像文化の近未来:麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」(4/4 ページ)
「技研公開2015」では、SHV(スーパーハイビジョン)に関わる多くの技術が公開された。後編ではレーザーバックライト技術や、低ビットレート転送、ホログラムメモリーといった技術を中心に見ていこう。
ホログラムメモリーは次世代映像の「革袋」
麻倉氏:データ関連の技術でいうと、保存の分野でも非常に興味深い展示がありました。「長期的」「2〜3年後」とはいっていたのですが、実用化を目指すものの中で目を引いたのは、樹脂の塊にデータを3次元記録するホログラムメモリーです。
――まだ研究段階ですが、次世代のストレージ技術として、ここ数年ホログラムメモリーは注目を集めていますね。
麻倉氏:従来の保存媒体は半導体やHDD、Blu-rayなどの光学ディスクだったのですが、大容量が要求される8K時代では、これら既存技術の延長では厳しいでしょう。例えばフルスペック8Kの圧縮記録装置の場合、現在用いられているものでは512GバイトのSSDを16枚も使って、やっと8Tバイトの容量を構成しています。
ホログラムメモリーは、角度を変えて書き込み読み込みすることで、同じ面積にデータを多重記録する方式です。今回展示された現行の装置は、31度の間に0.15度のずつの記録層、合計で200多重の記憶層を持っています。これだけの記録層を確保しているので、わずか3センチ四方のホログラムが75Gバイトの容量になるんです。これはBlu-ray単層の3倍くらいに匹敵する容量ですね。Blu-rayの面積は12センチですが、ホログラムはわずか3センチで同容量を実現します。
――75Gバイトの容量が3センチ角とは驚きです。立体ですから、体積を大きくした時の容量増加分も相当ですよね。樹脂を少し大きくするだけで、あっという間にHDD並みの大容量になりそうです
麻倉氏:どのくらい入るかとかいう技術的なすごさもさることながら、ホログラムメモリーには先進性というか、斬新さ、もっというと「カッコ良さ」が見られます。従来のHDDやSSDはレコーダーに内蔵されていますので、メモリーそのものは外に出ておらず、われわれはガワしか見ていません。一方光ディスクは「光っているヤツが強い」という、レーザーディスク以来の伝統があります。ですが「コンベンショナルな、旧世代型のメモリー」というイメージは脱し切れません。
ところが、ホログラムはどんな形でもいいという訳で――まあ円盤でもできるわけですけれど――従来と違った四角型の透明な物体の中に75Gバイト入る。これが実に新世代の記録メディアですね。放送が新世代になれば、それを記録するメディアもやはり新世代になる必要があるのではないでしょうか。もちろん従来のメディアにも次世代映像は記録できますが、新しいシステムというものに対しては、その世代を象徴する「新しいルック、アピアランス、チャーム」が欲しい。「新しい酒は新しい革袋に」という格言通り、新しい放送は新しいメディアに保存するべきです。小さいカタチで保存できれば場所も取らず、再生するときも「カッコイイな」と思えるのです。
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