食材と対話する? ミーレが開発した“ダイアログ・オーブン”とは(2/2 ページ)
日本でもファンが多いドイツの高級家電メーカー、Miele(ミーレ)。そのミーレが画期的な「ダイアログ・オーブン」を発表した。
ダイアログ・オーブンでは、従来の電子レンジやオーブンとは異なる加熱方式を採用している。英語では“electromagnetic waves”。つまり、電磁波を使用して加熱するオーブンだ。一般的な電子レンジでも電磁波は使用するものの、一定の周波数だけではなく、幅広い周波数を食材に応じて使い分ける点が異なる。さらにエネルギーが食材にどれくらい吸収されたかをセンサーで10秒ごとに検知、調整しながら調理を行なう。
オーブンの上部にある2本のアンテナは915MHz付近の周波数帯で電磁波を放射。同時にアンテナは調理が完了したことを判別できるよう、戻ってきたエネルギー量を計測している。これをエネルギー総量から引き、食材が吸収したエネルギー量、つまりどれだけ加熱されたかを測定するわけだ。
2.45GHzを使用する電子レンジよりも効率的かつ均一、そしてより素早く料理できるダイアログ・オーブン。ただ、その電磁波というのはほとんどのヨーロッパの携帯電話会社と同じ範囲のものであり、電話に干渉しないように配慮されている。例えば、通常のミーレのオーブンとは異なり、ガラス窓から中の様子を見るといったことができない。分厚い黒い材質で閉じられていた。
今回のデモンストレーションでダイアログ・オーブンは、肉や魚は食材としてしっかりと認識し、美味しく食べられるように、均一かつしっかりと熱を通して調理をした。一方で氷やロウは食材ではないと認識し、無駄に熱を入れず調理もしない。ミーレは、その可変性電磁波を使用した食材認識力の高さ、エネルギー効率の高さ、その先にある時短調理力などを伝えたかったのだろう。
つまり“ダイアログ・オーブン=対話式オーブン”という意味は、個々の食材としっかり対話しながら、一番美味しい形で仕上げられるオーブンという意味だった。しかもエネルギーを吸収するのは食材のみで、載せているトレイやそれ以外のものにエネルギーは使われない。これは省エネと時短につながる。ミーレによると、例えば子豚の丸焼きは通常のオーブンの場合で7〜8時間焼き続ける必要があるが、ダイアログ・オーブンなら2時間ほどで焼き上がるという。
実は他にもデモンストレーションは行われた。それはアルミホイルでシャケの切り身を半分だけ包み、半分はそのままの状態で「ダイアログ・オーブン」の中へ。同じ切り身でも加熱されたところと加熱されていないところにセパレートするというものだ。1つの切り身から、2つの食感を同時に楽しめるというところも新しいが、そもそも一般の電子レンジにアルミホイルはNGだ。
ただ、ダイアログ・オーブンを一般家庭で使いこなすにはまだ少しハードルが高いかもしれない。まず、ダイアログ・オーブンを使った家庭向けレシピがどれだけ作れるのか。ミーレは、ミシュランのガイドブックで星を獲得するようなトップシェフと新しいレシピ開発をしていくと説明している。またダイアログ・オーブンは新技術であるので非常に高価だ。2018年4月に世界に先駆けてドイツで発売する予定だが、想定価格は7990ユーロ、日本円で約105万円とのこと。
スマートより革新
今年も「IFA 2017」を取材したが、会場にはたくさんのオーブンが並んでいた。例えばAEGは、ドアにカメラ内蔵のWi-Fi対応オーブンを2018年にリリースする予定だ。サムスン、LGエレクトロニクス、シーメンスなどのオーブンはWi-FiやNFCを搭載し、スマートフォンとオーブンが文字通り対話しながら操作する。IFAに出展はしなかったものの、Juneという新興企業の「Intelligent Oven」には、特定の食品を識別して自動的に調理するためのカメラと顔認識技術が搭載されている。ほかにも、スキャナーを使って、予めパッケージされた食事を自動的に調理できるTovalaのスマートオーブンといったものもある。
だが、これらはあくまでも既存のオーブンを便利にする機能を追加したものだ。対してミーレのダイアログ・オーブンは、オーブン自体の概念を変えるような新技術といえる。オーブンをさらに活用し、より美味しい料理を届けようとしている点で、さらにすごいと思う。
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