JOLEDがテレビ向け有機ELパネルを作らない理由
ソニーとパナソニックの技術を継承したJOLED(ジェイオーレッド)が、世界初のRGB印刷方式による有機ELパネルの量産を開始した。テレビ向け大型パネルの製造技術も確立しているが、製造する予定はないという。
ソニーとパナソニックの技術を継承したJOLED(ジェイオーレッド)が、世界初のRGB印刷方式による有機ELパネルの量産を開始した。サイズは“中型”に分類される21.6インチ。テレビ向けの大型パネル生産も期待されているが、現時点で参入することは考えていないという。
2015年1月にパナソニックとソニーの有機EL開発部門を統合して設立されたJOLEDは、パナソニックが10年以上開発してきたRGB印刷方式を引き継ぎ、ソニーがこだわっていたトップエミッション構造の有機ELパネルを製造する。12月5日に初めて量産出荷を開始した21.6インチパネルは4K対応で、ソニーの医療機器部門であるソニーイメージングプロダクツ&ソリューションズのメディカルモニターに採用が決まった。今後は有機ELを採用した製品が極めて少ない中型パネル市場で、車載やゲーム用モニターなど幅広い分野に展開していく考えだ。
ただし同社によると、RGB印刷方式によるテレビ向け大型パネルの量産技術も既に確立しているという。「前身であるパナソニック時代、酸化物TFTを作り、カットしてから56インチで印刷する手法でテレビ向け有機ELパネルを製造していた(2013年、14年のCESで展示したもの)。このとき、既に基本的な技術はできていた」(同社広報チームマネージャーの加藤敦氏)という。ただ、当時は印刷装置のほうがG5.5(第5.5世代、マザーガラスのサイズは1300×1500mm)のため、先にカットする“枚葉どり”という手法にせざるを得なかった。
「現在はマザーガラスと印刷装置がともにG8.5(2200×2500mm)のフルライン生産技術がある」。G8.5は、55インチの“6面取り”が可能な大きさだ。
テレビ用の大型有機ELで先行する韓国LGディスプレイは、RGBの有機材料を20層ほど重ねて白色に発光させ、カラーフィルターを用いて色を付ける“ホワイト蒸着”方式を採用している。JOLEDの東入來信博社長は、「ホワイト蒸着では発光効率の向上に限界がある」と指摘。「RGBを塗り分けるのが有機ELパネルとしての最終的な姿だろう」とした。同社は有機ELパネルの発光効率やパネル寿命といった課題にも継続的に取り組んでおり、13年のCESに出展した試作機に比べ、16年の段階で白色発光効率は2倍になった。2018年までにはデバイス構造と材料の改良により「さらに1.5倍」にする計画だ。
ここまで技術開発を進めながら大型パネルを手がけない理由は、まずリソースの問題だという。「われわれは顧客企業へのヒアリングなどを通じて中型パネルの領域に需要が存在するという手応えを得ている。しかし、300人程度の会社で中型と大型を同時に手がけることは難しい。一方で大画面テレビ向けの大型パネル生産に興味を持っている企業があり、中型パネル製造と大型パネルの技術供与を分けてマネタイズすることに決めた」と加藤氏は説明する。
RGB印刷方式は海外パネルメーカーやセットメーカーの関心も高く、既に複数社と実際に話をしているほか、問い合わせも多いという。「初期的な段階の話合いは既に始めている。有機ELパネルのラインに自前投資できる会社にわれわれの技術を活用してもらい、将来的には“収益の柱の1つ”にする。パートナーと一緒に市場を拡大し、RGB印刷方式をデファクトスタンダードにしたい」(加藤氏)
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