首都圏のキオスク、3分の1休業――Suica導入の意外な影響

» 2007年04月17日 18時34分 公開
[吉岡綾乃,Business Media 誠]

 最近、首都圏の駅売店「キオスク」で、シャッターが閉まったままの店舗が多いのにお気づきだろうか。実は首都圏のJR各駅で、キオスクが3分の1程度臨時休業したまま、という事態が続いている。

JR西日暮里駅のキオスク。シャッターが閉められたまま、臨時休業が続いている(左)。反対側のホームのキオスクも閉まったまま(右)

 原因は人手不足だ。キオスクの販売員には年配の女性が多いが、実は彼女たちは、キオスクを運営する東日本キヨスク(7月1日より「JR東日本リテールネット」に社名変更予定)の正社員である。東日本キヨスクでは2006年8月から、東京圏で早期退職制度を導入し、約400人の正社員が退職した。東日本キヨスクではこの穴を埋める契約社員やアルバイトを募集しているが、予想より応募が集まらなかったという。

 なぜこうなってしまったのか? 大きな理由は2つある。“時代の流れ”そして“Suica電子マネー導入”だ。

コンビニタイプへ店舗をシフト

 キオスクの販売員が正社員待遇で、しかも年配の女性が多いのは、東日本キヨスクの特殊な成り立ちによっている。

 東日本キヨスクはもともとは財団法人鉄道弘済会の一事業だった。「鉄道関連にはかつて、肉体的に危険な業務が多かった。(旧国鉄の)社員が業務で怪我を負って仕事ができなくなった場合などは、その夫人に正社員としてキオスクで働いてもらって(夫が働いた場合)相当の給料を保証するわけです」(東日本キヨスク広報部)

 しかし東日本キヨスクは財団法人から、株式会社になった。現在はJR東日本の完全子会社だ。「時代の流れに合わせて、我々も“普通の会社”に変わらなくてはならなかったのです。正社員の早期退職制度導入は避けられなかった」(同)

 また、駅スタンドのキオスク自体が、時代の流れにそぐわなくなっている、とも指摘する。「団塊世代が一斉に退職した影響は大きかった。新聞、雑誌、たばこといった、キオスクの主力商品が売れなくなってきています。その一方、コンビニ型店舗は売り上げを伸ばしています」

 今回早期退職制度を導入する以前から、JR東日本エリア内のキオスクは減少傾向にあった。最盛期(1995年末)に1392店舗あった駅スタンド型のキオスクは、2006年度末では892店舗に減っている。一方増えているのは、コンビニ型店舗。2001年に登場した「NEWDAYS」は、2006年度末で343店舗ある。

東日本キヨスクが運営する店舗の、業種別売り上げシェアの変化

Suica電子マネー推進の影響

 もう1つの理由が、JR東日本のSuica電子マネーを駅ナカ店舗へ導入する流れだ。親会社であるJR東日本が、Suica電子マネーの普及を強力に推進しているため、東日本キヨスクでもこれを受け、NEWDAYSを始めとする各種店舗でSuica電子マネーを導入している。

Suica用リーダー/ライター。駅ナカ施設各種のレジに置かれている(左)。Suicaが使えることが特徴になっているコンビニ「NEWDAYS」(右)

 スタンド型のキオスクでも、POSレジを入れてSuica電子マネーに対応している。2004年頃から試験導入を始め、2005年からは本格的に導入、現在ではほとんどのすべてのキオスクが、Suica対応のPOSレジを導入している。

 スタンド型のキオスクを支えていたのは、販売員たちの熟練の技だ。暗算が得意で、商品と同時にパッとお客につり銭を手渡す。売れる商品、売れない商品を把握しており、商品の仕入れも販売員が行っていた。しかしPOSレジの操作には、熟練の技は必要ない。レジ操作ができさえすれば、アルバイトでもかまわない。仕入れるべき商品は、POSのデータを見れば判断できる。

キオスク、営業再開のめどは……?

 記者もいくつかの駅でシャッターが閉まったままのキオスクを見かけたが、張り紙には営業再開のスケジュールは書かれていなかった。

張り紙には、休業の理由も営業再開のスケジュールも書かれておらず、最寄りのNEWDAYSの場所が案内されているだけだ

 東日本キヨスクでは、人手が集まり次第、臨時休業中の店舗は順次再開していく方針だ。公式サイト(参照リンク)では、「エフ・スタッフ」と呼ぶ契約社員を大々的に募集している。退職した正社員の穴を契約社員で埋めるためには、500人のエフ・スタッフが必要、と同社では見込んでいるが、思うように採用が進んでおらず、営業再開のスケジュールを明言できないのが現状だという。

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