インプットは仕入れ、アウトプットは広告──松尾順さんの“情報流通術”達人の仕事術(1/2 ページ)

» 2007年07月10日 20時19分 公開
[高橋暁子,ITmedia]

 フリーランスのコンサルタントとして、大企業のマーケティング支援やキャリア作り支援をしている松尾さん。忙しい毎日でも、いつも新しい知識のインプットやアウトプットを続けられる秘訣は何だろう。

趣味のコンガと松尾さん。月に2回ほどコンガの先生に来てもらって個人レッスンを受ける。オフィスは即席の音楽スタジオに

インプットは仕入れ、アウトプットは広告

 インプットもアウトプットもどちらも大切だ──と頭では分かっているが、仕事に追われてそれどころではないという人は多い。インプットもアウトプットも両立し続けることは、忙しいビジネスマンにとって不可能なことなのだろうか。

 松尾さんは、自分のブログとメルマガを持っており、毎週月曜から金曜までの週5日、欠かさず執筆を続けている。ブログとメルマガはほぼ同じ内容であり、ブラウザとメールソフトのどちらからでも好きな方法で読めるようにしているというわけだ。

 「独立したときに、既存客だけに頼っていると先細っていくだけだと思いました。会社は、規模の大小に関わらず、商品の開発や製造、提供以外に、広告や営業に一定の時間やお金をかけるものですよね。そこで、独立コンサルタントの私も、広告や営業の位置づけで、自分から発信をしていくことにしたのです」

 メルマガやブログの執筆に1日1時間から1.5時間はかけている。事前の調査も考えると、通常業務ではないメルマガとブログをのインプットに2時間はかけるというから、1日におけるウェイトは軽くない。松尾さんによれば「インプットは仕入れ、アウトプットは広告」だという位置付け。メルマガやブログの執筆も重要な仕事であって、業務の合間にやる片手間の仕事ではないのだ。

 実際、ブログやメルマガは、自身の業務内容について理解や関心を持ってもらうきっかけになっている。既存客との関係維持に役立つのはもちろん、専門誌などから取材を受けたり、新しい仕事の依頼をもらったりと、ルートが広がった。主に口コミでしか仕事の話が来ることがなかった以前と比べて、仕事のきっかけが大分変わったという。

 「今のメルマガの前にも別のメルマガを書いていたことがあります。その時は週に1度でフリーテーマだったので、かえって切り口が思いつかず、長続きしませんでした。しかし、マーケティングには人の心理の理解こそが大切だという考えを踏まえて、心理学とマーケティングを融合させる『マインドリーディング』(顧客心理の解読)という切り口を考えました。切り口を決めて毎日書くというように義務化したことで、かえって楽に続けられるようになりましたね」

 切り口を決めることで、いつもその切り口であらゆるものを見るようになる。自然とあらゆる物事に関する考えが深まり、同時に発信もできる──一石二鳥というわけだ。

 「ネットでの発信は役立つと感じていますが、炎上はしたくない。そこで、人をけなしたりおとしめたりするようなことは書かないと決めました。たとえば不祥事を起こした経営者などを話題にするにしても、一方的に批判して終わるのではなく、建設的な内容にするように心がけていますね」

 「ほぼ日刊イトイ新聞」などをお手本にしたという自身のメルマガでは、なるべく会話文を入れるようにもしている。読み手がピンと来ない話題は書くのを避ける。多くの人に共感してもらえるようなネタに落とし込むことが大事だと思うからだ。

 「たとえばゴルフやワインは、専門家だと世間で認識されている人が言及するならいいですが、あまりマニアックな話題に立ち入ってしまうと、読み手が着いて来れない可能性があります。だから、ビールのような誰でも身近に感じるものを取り上げるようにしています」

 とはいえ、執筆のためのインプットに時間を割くと、結果的にトータルの仕事量が増えてしまう。「どうしても平日は毎日のように残業し、そして週末に働くハメになる」と苦笑した。

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