インプットは仕入れ、アウトプットは広告──松尾順さんの“情報流通術”達人の仕事術(2/2 ページ)

» 2007年07月10日 20時19分 公開
[高橋暁子,ITmedia]
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書籍の購入は“地引き網型”

 事務所には至るところに本が積み上がっている。買っているうちにどんどん増えたという蔵書は、事務所だけでもざっと2000冊以上。そのうち約9割がビジネス書だという。読書に充てる時間は、主に通勤の片道1時間ずつの往復2時間だ。日中の外出、クライアントのオフィス訪問でも必ず本や雑誌をカバンに入れて行く。たとえ片道15分でも往復30分の読書時間が取れるからだ。

 購入するポイントは、過去に著書を読んで信頼できると思った著者か、タイトルの面白さだ。そうした情報は、主に新聞、雑誌、ネットで仕入れる。単行本については、体系的な知識が得られそうなものか、資料になりそうなものという視点も加わる。優れた書籍に出会ったら、その本が参考にしている文献にあたるのも、よい本を探すコツだという。

 「本の買い方は“地引き網型”です。経営、マーケティング、組織論、IT、心理学、社会学、キャリアデザインなど、興味がある分野の本は一度にある程度揃えてしまいます。特に専門分野については、“人と同じことがいえる上に、違うこともいえる”が理想。古典的名著は当然のこと、最新のものも押さえておくべきだと思っています」

 全体のうち7〜8割の本は“積ん読”だが、欲しいときにそこにある──ことが重要。必要になってから手に入れていてはビジネスには遅いことも多い。「質の良い情報を迅速に手に入れるためにはある程度の無駄を許容する覚悟が必要」という考え方だ。

 書籍中のチェックポイントは後からいつでも参照できるよう、ページの上を折り曲げている。ちなみに下を折るのはどこまで読んだかという印だ。こうして折っていれば、いちいちメモ書きすることなく重要なポイントを参照できるというわけだ。

事務所にうず高く積み上がる本の山。たとえ読めなくても、タイトルが分かるように背表紙を向けるようにしているのだ

 書籍ではなく、メールマガジンやブログからの情報収集はどうしているのだろう。「受信すると全部読みたくなってしまう性質なので、ブログのRSSフィードはたまるとストレスを感じます。RSSリーダーよりもメールソフトの方が早く読めるので、メルマガが発行されているものは、なるべくテキストベースのメルマガで取るようにしています。ITmediaのようなニュースメディアサイトのメルマガもトピックを一覧できるので便利です。有料のメルマガも積極的に取るようにしていますね」

 RSSは便利だが、メールやブラウザとは別のRSSリーダーを立ち上げる必要があるため、読むスピードが落ちてしまう。インプットは自分が慣れているツールで一元管理したい。それだけ効率も上がるのだ。

 有料のメルマガも「安い」という。書籍であれメルマガであれ、知らない情報を獲得するために支払ったと思えば安いもの──という考え方だ。

 「インプットにお金をかけるのは、メーカーが原材料の仕入れにお金をかけるようなものです。私は仕事で知識や知恵、すなわち私なりに加工・編集した“情報のアウトプット”を売っているので、仕入れに当たる情報のインプットに相応のお金をかけるのは当たり前のことだと考えています」

コミュニケーションをメールで管理

 仕事中は、仕事が中断されるし効率が悪いのでなるべく電話には出たくないという人も多いだろう。松尾さんも同様だ。また、夜遅くの電話はマナー上好ましくないと考えている。まずは隗より始めよ──ではないが、夜10時になったら自分自身の携帯電話も切ってしまう。打ち合わせや通勤時なども留守電にし、電話には出ない。「松尾は電話に出ない」ということが周知されたことで、結果的にみんながメールで連絡を寄越すようになったという。

 もちろん、内容によっては電話で連絡を取り合うこともあるが、コミュニケーションがメールで一元管理できるようになると、業務も効率的になった。インプットやアウトプットのための時間も生みだせた。

 読みやすさにも心がけている。1行は25文字程度。「読者の目線に横移動が多いと読みにくいし、読むのに時間がかかります」。1行ごとの文字数を厳密に決めるのではなく、文節で改行するようにしている。文字数を決めて折り返すと、見た目はきれいだが結局読みにくいものになってしまうと考えるからだ。また、段落ごとに必ず空行行も入れている。

 「たとえば【松尾です ○○の件について】などのように、タイトルに自分の名前を入れたり、プロジェクト名を入れたりしています」


 仕入れにあたるインプットも、広告宣伝にあたるアウトプットもおろそかにしない。情報をよどみなく流通させることが、松尾さんのコンサルタントビジネスの強み──すなわち松尾流“情報流通術”なのだ。

ノートPC、ノートPC用冷却装置、手帳、携帯、磁石入りクルミ、グリップ、ブックストッパー、iPod。磁石入りクルミとグリップは、考えるときに手を動かすと頭に刺激を与えるので使っている。ブックストッパーは、本を参照しながらブログを書きたいときに大活躍だ
プロフィール
お名前 松尾順(まつお・じゅん)
経歴 1964年生まれ、福岡県出身。早稲田大学商学部卒。ニールセン・ジャパン、CRC総合研究所などで、マーケティングリサーチ、コンサルティングに従事した後、電通ワンダーマンで、データベースマーケティングやCRMの企画、プロデュースを体験。現在は、有限会社シャープマインドの取締役/プロデューサーとして、主にマーケティングリサーチ、プロモーション、Webサイト開発、CRM施策、新規事業開発などの企画・プロデュースを行う。
PC Dell(デスクトップPC)、Let'snote(ノートPC)
携帯電話/PDA(データ通信カードを含む) NTTドコモ「F900iC」
デジタルカメラ CASIO EXILIM
ブラウザ Internet Explorer 6
収集ツール(RSSリーダーなど) いきなり事情通
メールクライアント Outlook Express
インスタントメッセンジャー Skype、Windows Live Messenger
よく使うショートカットキー [Ctrl]+[S]、[Ctrl]+[V]
ファイル整理ツール(デスクトップ検索を含む) 特になし
バックアップツール オンラインソフトで外付けHDDに自動バックアップしている
検索サイト Google、Yahoo!
Webメール 使用せず
ブログ アルファブロガーサイト多数
SNS mixi
ソーシャルブックマーキング はてなブックマーク(それほど利用せず)
Wiki Wikipedia
影響を受けた人/本/Webサイト (人)五百井清右衛門氏(早稲田大学教授)、妹尾堅一郎氏(東京大学教授)、(本)システムの見方・考え方ソフトシステムズ方法論
座右の銘 継続は力なり
手帳/ノート 普通の手帳
ペン 安いシャープペンシル
その他小物(ICレコーダ、ポスト・イットなど) 三洋電機のICレコーダー、ポスト・イット
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