新興市場の低迷を受け大手ネット証券5社の2007年3月期決算は、減収減益という結果に終わった。楽天証券も株式の売買委託手数料収入が前期比−13.2%、さらに手数料引き下げ競争が収益力を圧迫した。これまで収益拡大を続けたきたが、“踊り場”を迎えた格好だ。
ただ明るい材料もある。6月には口座数が70万口座を超え、個人投資家の裾野は広がっている模様だ。口座数に限らず、1日あたりの平均注文件数・約定件数・売買代金は、いずれも5月末と比べ増加するなど、堅調に推移している。
投資信託の銘柄数は100本を超え、7月9日時点で106銘柄となった。顧客のニーズに素早く対応するため、海外向けの投信を数多く扱っている。今後の営業戦略を、マーケティング本部長の矢田耕一執行役員に話を聞いた。
6月15日に口座数が70万口座を突破した。1999年6月にサービスを開始して以来、約8年間で達成した。ネット証券ではSBIイー・トレード証券が140万口座を超え、次いでマネックス証券、楽天証券は3位に位置する。競争が激しいネット証券の中で急速に口座数を伸ばしてきたが、システム面では不安が残る。これまでシステム管理態勢の整備などで、金融庁から2回も業務改善命令を受けてきた。他のネット証券の社長からも批判されており、システムの安定化は急務だ。
70万口座突破の牽引役とも言えるのが、同社独自のトレーディングツールである「マーケットスピード」だ。個人投資家の間でも“最強のツール”と呼ばれるほど、高い機能を搭載している。「特に短期売買を繰り返す投資家にとっては、使い勝手が良い。リアルタイムの株価はもちろんのこと、20種類以上のチャート、速報ニュースが充実している」ことを強調する。その高性能のツールを30万人以上が利用しているため、システムの安定化は欠かせない。
マーケットスピードは株式投資の上級者向けのように思えるが、最近では初心者の利用者が増えているという。「スポーツカーと同じで初心者にも運転しやすいように工夫している。『いい車に乗りたい』と同じように投資でも『いいツールを使いたい』と思うはず。それが人間の本質だ」という。
特に情報量については、他社に負けないと自負する。マーケットが開いていない夜や休日でも、多くの情報を配信している。また半年に1度、バージョンアップを繰り返している。今後のマーケットスピードについて「少し遅くなったが、投資の世界にもWeb2.0的なものを取り入れたい。詳細は公表できないが、スピードを追求したツールにしたい」。現段階では他社が作っていないツールが、2008年中には完成する予定だ。
投信の取扱銘柄数を急速に増やしている。2007年の1月には53本を扱っていたが、7月で倍以上となった。銘柄を増やし続けた理由として「現在の投信はパフォーマンスが良いため、個人投資家に人気がある。中国など成長を続けている国は、相変わらず注目が集まっている」と語る。楽天証券では外国の株式や債券にも力を入れており、中でも米国株式の人気が高い。「世界の景気が良いので、個人投資家も海外投資に注目している。今後も海外に投資ができるプラットフォームを充実させていきたい」とし、口座数獲得につなげたい考えだ。
「個人投資家が何に投資をするか、ニーズの変化が速くなっている」という。ライブドアショック前では新興市場が中心だったが、その後、東証1部の大型銘柄に資金は流れた。そして、投信や外国株式、日経225mini、FXなどの販売が増えている。
楽天証券は海外ETFにも積極的に取り組んでいる。これまで海外ETFはREIT(上場不動産投資信託)を含め債券指数型を販売してきた。7月からは商品先物指数に連動するETFを、国内で初めて扱い始めた。これにより海外ETFは36銘柄となり、国内の証券会社で最も多く扱っている。「海外ETFの人気の要因は、信託報酬が安いことが挙げられる。また顧客を満足させるためには、商品ラインアップの拡充が重要だ」。同時に既存商品も強化していく方針で、8月からはFXを大幅に刷新するという。
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