任天堂VSソニー対決を株価で見ると……。投資特集「銘柄分析」

» 2007年07月06日 21時20分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 6月下旬、任天堂の時価総額(株数×株価)がソニーを上回り、時価総額ランキングで上位10位に入った。7月6日現在で任天堂の時価総額は6兆9630億円、ソニーは6兆5614億円と差が開いた。ゲーム事業でライバルだったソニーの時価総額を、任天堂は初めて上回ったことになる。国内ゲーム販売台数(2007年1〜6月)では、任天堂が3倍以上の差をつけソニーを圧倒。ニンテンドーDSとWii(ウィー)の販売実績が株価に反映された格好だ。

 任天堂とソニー――両社の業績は株価にどう反映されているのか。決算数字から見る今後の株価、市場関係者がどこまで織り込んでいるのか、などをフィスコのチーフアナリスト佐藤勝己氏が分析する。

任天堂の経常利益は2900億円を上回るはず

フィスコのチーフアナリスト佐藤勝己氏

 企業のファンダメンタルズ(業績などで株価を分析する手法)を見ていく場合、営業利益(本業で稼いだ利益)を分析するのが一般的だ。任天堂の場合は、円安の為替差損の影響が大きいので、経常利益(本業含め継続的な活動で得ている利益)を見ることが大切になる。株価は2005年8月ごろから約4倍となった。2005年3月期の経常利益は189%増の1453億円、2006年3月期は10.6%増の1607億円、2007年3月期は79.7%増の2888億円と大幅に増加している。

 任天堂が予想した2008年3月期の経常利益2900億円は、対前年度比で0.4%の増加でしかない。「任天堂の予想通りであれば、経常利益のアップ率が低いので株価は下がる可能性が高かった。しかし市場関係者は『任天堂の予想は低い』と判断して、株価が上昇していった。これまでの株価の上昇を見ていると、経常利益3500億円以上を織り込んでいる」と分析する。

7月中旬に上方修正か?

 ある出版社では、任天堂は2008年3月期決算で、経常利益3500億円と予想している。「市場関係者は、任天堂の予想を信用していない。上方修正の発表を待っている状況だ」。ある情報筋によると、7月の中旬にも任天堂から上方修正の発表があるという。「もし経常利益が3500億円より上回った場合には、さらに株価が上昇する可能性がある。ただ、3500億円程度だった場合には、『材料出尽くし』(株価を動かす好材料が出尽くした)ということで利食い(売却して利益を得る)があり、下がる可能性がある」。

 ある証券会社によると、任天堂の来期(2009年3月期)は、横ばい予想を出している。「任天堂の株価は今がピークかもしれない。DSやWiiといった大ヒット商品が次々と販売される可能性は低い。チャートを見ても過熱感が出ているので、今後は株価のピークがいつ来るか、その見極めが大切だ」と指摘する。

営業利益率5%末達であれば、株価は調整

 一方、任天堂に時価総額を抜かれたソニーだが、2006年12月ごろからは株価が上昇している。2007年3月期決算の営業利益は、対前年度比−68.3%の718億円だった。しかしエレクロトニクス分野の売上高は前年度比16.9%増で、中期計画を1年前倒しで達成。ゲーム分野の売上高は6.1%増だったが、PS3の製造コストを下回る価格設定で販売したため、2323億円の損失を出した。

 「エレクトロニクス分野の復調は、すでに織り込まれている。しかし、ゲーム分野の利益を出さなければ、株価の上昇は難しい。任天堂のゲーム販売状況に陰りが見えない中で、ソニーの苦戦が予想される。現状ではクリスマス商戦も“完敗”するだろう」と厳しい見方だ。

 ソニーは全社の営業利益率(売上に対する営業利益の割合)を、中期経営目標に掲げている。2007年度は中計の最終年度に当たり、営業利益率5%を達成できるかどうかがカギとなるだろう。「もし5%が達成できなければ、ソニーの株は大きく調整する」と分析する。

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