著者プロフィール:目黒陽子
フリーアナウンサー(ライムライト所属)。大和証券SMBCを経て、資格ファイナンシャルプランナーを取得後、キャスターへ転向。NHK総合「お元気ですか日本列島」「BSニュース」などを担当し、政治・経済など、情報を伝えることの大切さと難しさを学ぶ。現在は日本テレビ系列で土曜朝8時から放送されている情報番組「ウェークアップ!ぷらす」(読売テレビ制作)にて司会を担当している。同じくアナウンサーの滝川クリステルは従姉妹にあたる。ブログ:http://www.fpcaster.com/
連日の報道で、中国産食品に対する不信感は募るばかり。ダンボール肉まんは結局のところ“やらせ”報道だったようですが、ウナギに発ガン性のある抗菌剤が使われていたことを示す物質が見つかるなど、中国産食品は正直、怖いですよね。
中国産か国産かだけでなく、食の表示に関して国はもっと徹底する必要があるでしょうし、私たち自身も学んでいかなければいけない時代になりそうです。
最近スーパーで、中国産食品の売れ残りを見かける機会が増えています。主婦の中国産への不信感は確実に広がっているようですね。私自身、スーパーで買い物をするときに、以前はあまり興味がなかった“産地”を確認するようになりました。
特に気になるのは野菜やエビ、ウナギなどの食材です。そろそろ土用の丑の日、政府は確認済みだとしていますが、それでも中国産は怖くて……と思いますよね。
中国産が不安だとして、国内産なら大丈夫かと言えば、国内でもお肉の偽装があったばかりです。ミートホープの驚くべき手法により、消費者はすっかり騙されていたことを知りました。牛肉ミンチと表示されているにも関わらず、豚肉・鶏肉・鴨肉・豚の心臓と何でもあり。詐欺以外の何者でもありません。
例えばハンバーグを作るとき、牛肉100%だとすれば少々赤いところがあっても食べてしまうでしょう。でも豚の心臓が入っていると知っていれば? しっかり火を通さなくてはならないから、そんな怖いことしませんよね。おまけに味を調整するために、何度も実験を試みて、化学調味料を大量に加えていたというのですから、まったくあきれるばかりです。
そう、怖いのは中国産だけではないんです。一体私たちは何を信じて食の安全を確認していけばいいのでしょう? これを機会に、国は制度固めをしっかり行う必要があるでしょう。同時に、私たちは自分で食の表示を少しずつでも学ぶ必要があるのかもしれません。
食の表示の基本といえば、「賞味期限」「消費期限」。読者のみなさんはこの2つがどう違うか、ご存じでしょうか? 実は私自身も、「おいしく食べられる目安が賞味期限で、いよいよこれを過ぎたら腐りますよ、という目安が消費期限かしら?」くらいにしか思っていなかったのですが、報道に携わるようになって初めてこの違いを知りました。それでは以下、クイズです。全5問、○か×で答えてください。
第1問:賞味期限と消費期限の両方が付いていたら、消費期限のほうが長い。
第2問:牛乳には賞味期限が記載されている。
第3問:肉には消費期限が記載されている。
第4問:卵の賞味期限は、生で食べられる期間を示している。
第5問:“中国産は好まない”という人も、「国産牛」と書いてあれば安心できる。
分かりましたか?では以下、答え合わせです。
まず第1問から。正解は×。賞味期限と消費期限は、“対象になる物によって呼び分ける”のです。従って、賞味期限と消費期限が1つの食品に両方付けられることはありません。
続いて第2問は○が正解。賞味期限は、缶詰・レトルト食品など、比較的劣化しにくい食品に付けられるものです。緩やかな目安で、「おいしく食べることができる期間」を表示しています。つまり、表示を過ぎて食べても大丈夫!
第3問も○。消費期限とは、お弁当やお惣菜・肉など劣化が早く、傷みやすい食品を安全に食べられる期間を示します(おおむね5日以内)。賞味期限よりも、消費期限の方を期間厳守した方がいいでしょうね。
第4問も○が正解になります。卵の賞味期限は生で食べられる期間を表示しているそうです。つまり多少期間を過ぎても、保存状態が悪くなければ、加熱調理をすれば大丈夫だそうですよ。
第5問は×です。「国産牛」は日本で3カ月以上飼育された牛を指すので、海外で飼育されていた牛でも、輸入された日から3カ月が経過して国内で処理されていれば“国産”と表示できるのだそうです。もちろん様々なチェックは通過しているのでしょうが、それでも驚きですよね。
いかがでしたか? 5問すべて迷いなく正解できた方は少ないのでは。食の表示はもっと分かりやすくすべきではないでしょうか。
私たちは食品を買うとき、パックに記載されている表示を信じるしかできません。企業が不正を行っていたとしたら、国が管理してくれない限り、私たちはされるがままです。中国産食品やミートホープの事件がきっかけとなり、食の安全に対する危機感が増している今こそ、国、そして農林水産省のしっかりした対応を望むばかりです。
その昔、ノーパンしゃぶしゃぶ接待が明るみに出たり、汚職事件が暴かれたりしたのをきっかけに、旧大蔵省は二つに分割されました。今は、財務省と金融庁になっています。財務省が、認可制で企業に対してどんどんチャンスを与える一方で、金融庁が「企業が悪さをしたら厳しくチェックしますよ!」という具合に、機能を分けて管理しているのです。
農水省は、農水関連企業を応援する仕事と、私たちの食の安全を守る機能の両方を行っています。つまり、もし関連企業への天下りを考えている役人がいれば、不正を行う企業があっても見て見ぬふりを決め込んでしまうかもしれないのです。そうなったら、私たちの食の安全は誰が守ってくれるのでしょう?
今後、人材バンクがどう機能するかは分かりませんが、農水省も今後形を変えていく時がくるのかもしれません。どういう形を取るにせよ、私たちの食の安全をしっかり守ってほしいと強く思います。
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