インタビュー
» 2007年07月24日 19時13分 UPDATE

手数料競争を制したSBIイー・トレード証券の、次なる狙いは

SBI証券と合併する狙いは何か、他社とはどこが違うのか――口座数が145万を超え、他のネット証券を引き離すSBIイー・トレード証券に戦略を聞いた。

[土肥義則,Business Media 誠]

 大手ネット証券の中で圧倒的な口座数を誇るのがSBIイー・トレード証券だ。2007年6月末の口座数は145万を超え、2位マネックス証券の75万口座を大きく引き離している。個人の株式売買代金のシェアは、29.4%(2007年3月末)で過去最高となった。「業界最低水準の手数料」と「業界最高水準のサービス」という基本戦略が個人投資家の獲得につながっているようだ。

yd_etre1.gif 個人の株式売買代金のシェアは2年間で8.3ポイントの増加

 手数料については5月中旬から「空前絶後の大作戦」と称し、金融商品の手数料を引き下げた(5月3日の記事参照)。「どの商品を選んでいただいても、業界最低水準の手数料にした。さらに数多くの金融商品を扱っているので、個人投資家が手軽に運用できることが強みだ」と佐藤義仁専務は語る。

 あるネット証券幹部は「SBIイー・トレード証券は他社に先駆けて手数料を引き下げたことが、現在の口座数につながっている。手数料戦略で遅れをとった他の証券会社は、追いつくことができない」と“白旗”を上げた状況だ。ただ口座数や株式の売買代金の伸びは、これまでの勢いに比べると陰りが見えている。今後の営業戦略について佐藤義仁氏に話を聞いた。

2008年3月末には170万口座を目指す

 SBIイー・トレード証券は2001年2月に、約定代金50万円までの手数料を2100円から840円に引き下げた(税込)。他のネット証券も2〜3年後に引き下げ「手数料競争」が過熱した。しかし先行者メリットを生かした同証券は、口座数を着実に増やし、他社を引き離していった。現在の手数料は各社とも、大きな差はない。では同証券だけ、なぜ口座数を大きく伸ばしているのか? この質問に対し「投信260本以上や米国株160銘柄以上を扱うなど、金融商品の品揃えは業界トップクラスだ。1つの口座を開けば、株・投信・保険・年金などを豊富に扱っているので、使い勝手がいいのではないか。株だけではなく投信も、債券だけではなくFX(外国為替保証金)も、など相乗効果が出ている」と説明する。さらに「今後の株式市況によっても左右されるが、2008年3月末には170万口座を目指したい。そうすれば投信など金融商品の販売が増えるだろう」と意欲を示す。

yd_etre.gif 大手ネット証券5社でSBIイー・トレード証券の口座数はトップ

 2007年3月末の預り資産残高は4兆1263億円で、ネット証券ではトップ。預り資産が増加している要因として、口座数との関係を挙げる。「現在の状況は株の手数料だけではなく、投資信託など数多くのサービスを提供できるかが重要だ。もう手数料競争ではなく、サービス競争の時代だ」と分析する。

 大手ネット証券の個人株式委託売買代金シェアを見ると同証券は、2年間(2005年3月末〜2007年3月末)で8.3ポイント増の29.4%となった。また3大証券(野村、大和、日興シティ)と比べても、2005年3月期から同証券が上回っている。「ただネット証券は、新興市場の市況に大きな影響を受ける。今期も厳しい状況なので、売買代金シェアは一進一退だろう」と気を引き締める。

両社の弱みを補完し、他社との差別化を図る

 同証券は10月1日に、グループ会社のSBI証券と合併する。ネット証券の特徴である低コストや集客力と、対面証券の地域密着型と提案営業などを組み合わせ、新たな事業モデルを提供していく方針だ。こうしたネット証券という枠を超えた事業モデルは、日本では初めてだ。

 ネット証券と対面証券には、それぞれ短所がある。ネット証券の短所は、顧客へのきめ細かな対応ができない。対面証券の短所は、高コストや集客力が弱いことだ。今回の合併で両社の弱みを補完し、他社との差別化を図っていくのが狙いだ。例えば投資信託で詳しい説明を求める顧客に対し、ネット証券では対応が難しい。こうした顧客には、対面証券でフォローしていくという。

 「個人投資家の8割はネット証券を利用しているが、残りの2割にアプローチすることが課題だった。ネット証券が届かない富裕層を囲い込んでいきたい」と強調した。ただSBI証券の27店舗をどう活用するか、など具体的なことは決まっていない。

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すべてのサービスを提供する

 口座数を伸ばすことに関しては貪欲だ。これまでは株取引の経験者や、以前から興味を持っていた人が口座を開くケースが多かった。ただ、それだけでは口座数の頭打ちは目に見えている。「今後は株のことを知らない人をターゲットにしていきたい。株取引が未経験の人でも始められるように、他社が始めているサービスをすべて行うつもりだ。つまりSBIイー・トレード証券で口座を開くと、他の証券会社が扱うすべてのサービスを利用できる。こうして新規顧客の掘り起こしに取り組んでいきたい」と抱負を語った。

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