第3回の「誠倶楽部」に指南役が登場! 「銘柄選びは難しくない」週1回リアルタイム連載「誠倶楽部」

» 2007年07月23日 16時11分 公開
[高橋暁子,Business Media 誠]

 7月から始まった素人集団のバーチャル株取引企画「誠倶楽部」。超ビギナーとダメ投資家が「持ち金100万円」「期間3カ月」の制限内で気になる株を買い、運用してみるという特集連動企画だ(7月9日の記事参照)

 まずは「身近な株」を買った3人だが、結果は散々だった。「これではマズイ」ということで、ビギナーなりに分析して買った銘柄だが、どうなったのだろうか? まずはメンバー紹介から。

誠倶楽部メンバー紹介


Business Media 誠の編集部員、土肥義則

土肥義則

Business Media 誠編集部員。3人の中で唯一株式取引経験ありということで一歩リードか。長渕剛の大ファン。大阪城ホールで開かれるライブのチケットを入手できたので、とにかく機嫌がいい。好きな曲は「東京青春朝焼物語」と「桜島」。


営業部員、真野裕章

真野裕章

アイティメディアで「Business Media 誠」を担当する営業部員。最近オークション詐欺にあってしまった。運営元のオークションサイトから80%分の保証をしてもらえるらしいと聞いたが、内容証明の取り方も分からず、取りに行ける時間には郵便局に行けない日々が続いている。ダイエットの方はというと、Excelのファイルで食べたものを記入して継続中。


フリーライター、高橋暁子

高橋暁子

ダイエットをしているはずが、最近パン作りにもはまっている高橋。焼きたては美味しくて食べ過ぎてしまうが、パンにはバターと砂糖がたっぷり入っているのでダイエットの敵なのでは? 食べた分をホットヨガで消費というダイエット的には意味のない日々が続く。最近作ったのはチーズとハムの入ったパン。チーズが溶けて美味しいがカロリーは高い。ちなみに土肥は、365日欠かさずあんパンを食べている。

企画概要

 週1回(金曜日の午後3時東京証券取引所終了後)、誠倶楽部のメンバー3人が集まり、その週に買った株の値段の動きをチェックし、翌週どの株を買うかを決める。自分が保有する株に関するウンチク、来週に向けての意気込みを語るほか、他のメンバーに対する意見も飛び交う予定。その議論の模様と銘柄の価格、各自の資産状況(折れ線グラフ)は、翌月曜日に記事を掲載する。期間は7月〜9月の3カ月間。

ルール

  1. 最初の持ち金は1人100万円。
  2. 1度に持てる株は、1人2銘柄まで。それぞれをどういう割合で持つかなどは、個人の裁量に任せることとする。
  3. 原則的に金曜日に清算する。翌週に同じ銘柄を持ち越すことも可能。
  4. 売る場合、終値(市場取引で最後についた値段)で売り、別の銘柄を終値で買ったことにする。そして、その銘柄を月曜日から1週間保有し、金曜日に清算する。
  5. 空売り(他人から借りた株券を用いて売却を行う取引)は禁止とする。あくまで買いだけ。信用取引(株式投資の資金を証券会社から借りて行う取引)もナシ。
  6. 実際には売買の際に手数料がかかるが、証券会社や売買方法などによって違うので、本企画では考えに入れないものとする。

講師が登場。株の買い方は難しくない

 この1週間(7月17日〜20日)の日経平均株価を見ると、週間で81円下落した。連休明けの17日は小幅安で、日経平均は21円安の1万8217円。17日には大手商社株が上場来高値を更新、20日には米国株の最高値更新(19日)を受け、鉄鋼株や造船、重機株の上げが目立った。20日の日経平均は1万8217円だった。

 「上がる」と信じて超ビギナーとダメ投資家が選んだ銘柄は、やはりというか「上がらなかった」。このままでは「持ち金100万円」が底をつくかもしれない。1回も上がらず、「期間3カ月」が過ぎるもかもしれない。恐怖と不安からカブドットコム証券で、「株の買い方」を教えてもらうことにした。

カブドットコム証券の臼田琢美常務執行役

臼田琢美

カブドットコム証券常務執行役。1989年から証券会社などを経て、旧日本オンライン証券の設立に従事、現在に至る。1996年にインターネット上の投資家コミュニティとして国内最大規模の「かぶこーネット(株式投資向上委員会)」を立ち上げる。「る〜さ〜!」はネット上でのペンネーム。テレビ出演や雑誌やWebでの連載など株式啓蒙家としても活躍している。臼田琢美の「かぶろぐ2(kabu.log2)」

臼田「実は、銘柄を選ぶのは難しくないんですよ」

3人「ええーっ!」

臼田「上がる銘柄は限られているのです。業績が好調な会社の株を買っておけばいいんです。上がりっ放しだと、割高に感じて買いづらくなりますよね。でも、そういう銘柄こそ買いなんですよ。みんな、安くなっているものを買おうとして失敗する傾向にありますね」

高橋「確かにそうです。安いと思った銘柄に、いいニュースが流れた。だから上がるかなと思って買っても、下がっていきました」

臼田「上がらない銘柄は、上昇しない傾向があるのでダメです。『誠倶楽部」のような短期トレードでは、上がっている銘柄を買うことが大切です。タイミングだけではなく、世間の流れが重要です。例えばBRICs(ブリックス)の成長によって輸出が増加、また円安によって、鋼材価格の国際競争力がついた。そう考えれば鉄鋼セクターが狙いで、JFEホールディングス(5411)は上がってますよね。つまり誰もが好調と分かっている会社の株を買えばいいんですよ」

真野「そうなんですか……。買い方が間違っていたようです」

臼田さんの話を真剣に聞く2人

臼田「皆さんに言えることですが、できる限りの情報はチェックして、その会社について総合的に理解して買うべきです。情報は多ければ多いほどいいのです。チャートでも、年単位・月単位・週単位・日単位を見て買うべきですね。また業績予想についても、控えめな予想しておいて後で上方修正をする会社、その逆など、会社ごとの傾向がありますから注意してください」

土肥「なるほど、数年間に渡る動きを見るべきなんですね」

臼田「ええ。今のマーケットは、会社と業績がいいものが素直に買われています。新日本製鐵(5401)や三菱重工業(7011)とか、誰でも知っている会社が強いですね。その一方で、個人投資家に人気のある銘柄は弱い。『新しい企業の株を買ったら儲かるんじゃないか』というイメージで買っている人が多いのでしょう。実が伴っていなければダメで、株価は最終的に業績と連動していくものです」

真野「たしかに“一流”と呼ばれている企業の株は、上がっているところが多い」

臼田「それから、PERを見るべきです。例えばキヤノン(7751)は業績から比べて超割安です。業績はいいのに株価が下落していて、さらにPERが下がっている時は買いですね」

臼田琢美さんの買いのポイント

多くの情報を仕入れて、よく分析してから買え

イメージではなく業績が伴っている好調な銘柄を買え

業績はいいのに株価が下落していて、PERが下がっている時は買い


 それではここで今週(7月17日〜20日)の結果から。気になる結果をチェックしてみよう。結果は7月20日(金)の終値だ。

3人が買った銘柄の結果は以下の通り。

土肥 りそなホールディングス 285000円×1株=28万5000円

→275000円×1株=27万5000円

エルピーダメモリ 5700円×100株=57万円

→5400円×100株=54万円

持ち金合計 97万3000円→93万3000円

先週比 −4万円(−4.11%)

真野 ヤマダ電機1万3180円×20株=26万3600円

→1万2440円×20株=24万8800円

トランスコスモス2270円×300株=68万1000円

→2240円×300株=67万2000円

持ち金合計 95万2000円→92万8200円

先週比 −2万3800円(−2.5%)

高橋 アサヒビール 17万9400円×2株=35万8800円 

→17万9200円×2株=35万8400円

東芝(ミニ株) 11万3300円(100株)×5=56万6500円(500株)

→11万2400円(100株)×5=56万2000円(500株)

持ち金合計 93万6000円→93万1100円

先週比 −4900円(−0.52%)


2週連続でマイナス。低レベルだが土肥がトップ

 悔しいが3人とも減ってしまった。2週連続で、3人ともマイナスという厳しい結果だ。

第1回『誠倶楽部」の買い方に対する講評

「誠倶楽部」が買った銘柄を分析する臼田氏

 1回目に続いて2回目もマイナスという結果に終わった「誠倶楽部」。それぞれの株の買い方について、どこに問題があったのかを、臼田さんに聞いてみることにした。

土肥「テレビ東京(9411)は逆張りを狙いましたが、反発が弱かったですね」

臼田「テレビ東京は短期で儲かのは難しいでしょうね。過去のチャートを見ても、せいぜい1割程度しか上がっていないでしょう。つまり、儲かっても1割程度しか儲からない株ということなのです」

土肥「なるほど。ではフルキャスト(4848)はどうですか? 乖離率が大きかったので反発すると思いましたが……」

臼田「フルキャストは東証1部です。東証1部なら時価総額が1000億円近くあるべきなのに、ここは400億円程度しかない。つまり売れなくなった人が、いつ売れるか待つタイプの株だと分析できます。乖離率ですが、全体に上に向かっている場合に株価が移動平均線よりも下にある場合には買いです。基本的に反発とは、上昇している銘柄が少し下がった時に『安い』と思われて買われるから上がるものです。今回のように元々下がっている場合は、ちょっと上がっても、また下がる傾向がありますね」

真野「僕の買ったファーストリテイリング(9983)はどうでしょうか?」

臼田「あー、これは下がっているね。下がっているところで買ったからダメなんですよ。上り調子の時にもっと上るだろうと買った方がいいですね」

真野「たしかに下落傾向ですね。あと、関西汽船(9152)は、なぜ下がったのか分かりません」

臼田「関西汽船は、何かのきっかけで一気に上がるかもしれません。基本的にはセクターで上昇する傾向がありますが、東証2部は売買高が少ないので値動きも小さく、短期売買には向いていないですね」

高橋「ミクシィ(2121)は1週間で6.72%下落しました」

臼田「ミクシィは、新興市場の株で上がる時であれば多少買われることもありますが、今は難しいですね。そもそも業績以上に高く評価されて、割高に買われている銘柄です。うまく買えば2〜3割は上がりますが、基本的には右肩下がりですね。新規上場後の銘柄は最初は割高となり、1〜2年は下がり続けるものです。業績がよければ上がるかもしれませんが、少し上がっても売られますね」

第2回目の誠倶楽部の買い方は

土肥「エルピーダメモリ(6665)はこれから上がるはずのゴールデンクロスだったんです。なぜ上がらなかったのでしょうか?(7月17日の記事参照)

臼田「今の相場がもみ合いだからですね。日経平均が1万8000円を超えて、上下動を繰り返しています。こういう時は逆で、かえってデッドクロスの時に買った方がいいんですよ。でも、エルピーダメモリは基本的に悪くないですね。値幅は動かないので短期向きではないかもしれませんが、割高ではないですね」

土肥「なんだか自信がわいてきました(笑)。りそなホールディングス(8308)を買いましたが、銀行株は弱いですねえ」

臼田「20日の大引け後に、第一生命保険に対して議決権がない代わりに配当が高い優先株1000億円を発行、という情報が出ました。この報道に対し市場がどういう反応を示すか分かりません。ただ、銀行セクターで株価は動くことが多いので、あまり心配はいらないでしょう」

真野「ヤマダ電機(9831)は都市部に出店するというニュースで買ったのですが、株価は下がりました」

臼田「チャートを見ると極端に下落はしていないので、今後はなだらかに上がっていくかもしれません。ヤマダ電機は業種的に急激に伸びることはないけれど、株価の動きは悪くありません。業界トップであることが強みですね」

真野「悪くないと言われると少し嬉しいです。あとはトランスコスモス(9715)なんですが」

臼田「業績が悪くなっているので、買われないんですよ。単純なことです」

高橋「東芝(6502)はどうでしょうか。原発がいいということで買ってみました」

臼田「東芝は安定していますね。時流に乗って、上昇していますよ」

高橋「そうですか、よかった。あとアサヒビール(2502)を買ったんですが」

臼田「ちょうど下がっているので安くチャンスかもしれないですね。今後数年間の将来性や期待値を考えて、もしいいと思えば『買い』かもしれませんが、ズルズルと下がるかもしれません。割安ですが、食品株は割安で買われるものなので、今が特別というわけではありません」

投資ツールを使って、相場や銘柄の情報を入手する

さて3人はどの株を買う?

土肥「もう少し様子を見たいので、エルピーダメモリとりそなホールディングスをこのまま保有します。来週また判断しますよ」

真野「うーん。じゃあ僕もヤマダ電機はキープで。あとは、臼田さんが言っていた『誰もが知っている上り調子の会社』にしよう。そうだ、ニンテンドーDSやWiiが好調な任天堂(7974)を買います。そう言えば土肥さんは『任天堂VSソニー対決を株価で見ると……。』という記事を書いていましたね(7月6日の記事参照)

土肥「実は『誠倶楽部』1回目の前に、任天堂の株価について取材をしました。本当は買おうかな、と思ったのですが、なんだか罪悪感を感じて……。やっぱり買っておけばよかった(笑)」

真野「ダメですよ。取材する機会が多いので、裏情報とか入手しているんじゃないですか? “インサイダー”には気をつけてくださいね(笑)」

高橋「じゃあ、わたしはモバゲータウンが絶好調なディー・エヌ・エー(2432)で。新興市場は低調のようですが、ここはずっと上り調子ですよ。最近、ケータイ保険サイトにまで加入できるようになりました。5月には会員数が500万人を突破していますし」

3回目に買った銘柄

土肥

りそなホールディングス(継続保有) 275000円×1株=27万5000円

エルピーダメモリ(継続保有) 5400円×100株=54万円

真野

ヤマダ電機(継続保有) 1万2440円×20株=24万8800円

任天堂(ミニ株) 5万2900円×10株=52万2900円

高橋

ディー・エヌ・エー 42万9000円×2株=85万8000円


 果たして3人が買った株はどうなるか? 次回7月27日(金)の結果をお楽しみに。今回3人が買った銘柄や、買い方についてご意見・ご感想はこちらから。また記事へのトラックバックもお待ちしています。

今回学んだこと

もみ合い

相場が何度となく上下動を繰り返して騰落の方向性が決まらないこと。売りと買いが両方ある状態。

PER

株価収益率。この数字が低いと割安、高いと割高となる。株価と企業の収益力を比較することによって株式の投資価値を判断する際に利用される尺度。PER=株価/EPS。つまり、株価が500円で1株当たりの利益が50円ならば、株価収益率は10倍となる。

EPS

1株あたり利益。1株に対して最終的な当期利益(当期純利益)がいくらあるかを表す。ESP=当期純利益/発行済株数。


※同企画は株式投資に当たっての参考情報です。投資判断は自己責任でお願いします。


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