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» 2007年08月20日 17時05分 UPDATE

ロサンゼルスMBA留学日記:MBA流「兵役逃れ」の方法

サマーインターンが終わり、再びMBAでの学生生活が始まりました。連載再開第1回となる今回は“MBAと軍隊の関係”。日本ではあまり日常的な話題ではありませんが、MBAではけっこう身近な話題だったりするのです。

[新崎幸夫,Business Media 誠]

著者プロフィール:新崎幸夫

南カリフォルニア大学のMBA(ビジネススクール)在学中。映像関連の新興Webメディアに興味をもち、映画産業の本場・ロサンゼルスでメディアビジネスを学ぶ。専門分野はモバイル・ブロードバンドだが、著作権や通信行政など複数のテーマを幅広く取材する。


 本連載はこれまでMBAで学ぶ「戦略」「ファイナンス」「マーケティング」といったテーマを取り上げてきた。しかしこれからは、勉強を離れたトピックも扱っていこうと考えている。今回紹介するのは“MBAと軍隊の関係”だ。

 先日簡単に紹介した通り、軍人がMBAで学ぶケースは多い(7月10日の記事参照)。MBAには組織論など、軍人にとって有意義な授業もある。あるいは純粋に軍人からキャリアチェンジしたいという動機でやってくる生徒も多い。

 米国では軍人が比較的尊敬される職業、つまり人生におけるキャリア形成を考えた時に有意義な職業であるという。エリート軍人であることを就職の場でアピールできれば、マーケティングの世界や大手企業の戦略部門などで職を得ることもできる。そのため米国の軍人あがりのMBA生徒の中には、将来を見据え自ら軍隊を選んだという人もいるだろう。

 一方で、多くの韓国や台湾出身の学生も軍隊出身だ。しかし彼らの場合は、必ずしも好んで軍隊のキャリアを選んだわけではない。ご存知の通り、彼らには兵役義務があるためだ。

 20代の若い時期に、友人や恋人と離されて2年ほどを軍隊で過ごすというのを苦痛に感じる学生も多い。「いかに兵役を逃れるか」が話題になることも頻繁にあるそうだ。もちろん、国民として義務付けられている行為から背を向けるため、社会的に許されることではない。韓国で兵役逃れをした有名人や富裕層の子息に対し、マスコミは痛烈な批判をする。しかし、多くの学生は「兵役逃れの方法」を1度は考えたことがあるらしい。

兵役逃れの作戦いろいろ

 まずは“正統派の兵役逃れ”の方法から紹介しよう。1つは極めて勉強において優秀であることを示し、「学校で学ぶ方が国家にとって有益」であることをアピールするというものだ。ある知人の韓国人は“正統派”でもって、兵役を短縮してもらった。しかしこれは、誰もが選択できるものではない。ハーバード在学中の韓国人は「それは非常に難しい方法だ」と指摘する。

 別の兵役逃れとして「わざと病気になる」という作戦がある。ある台湾人生徒が紹介したのは、水を5リットルほど飲むという原始的な方法だ。少し前に米国で“水中毒”(Water Intoxication)で死亡した女性のニュースがあったが、大量の水を人体に取り込むと病気になる。これは生命に危険がおよぶ行為なので、実行はしないほうがいい。同じ台湾人によれば「救急車で病院に担ぎこまれるだろう」という。

 似た方法として、戦時中の日本にも召集逃れのために「醤油を一気飲みする」という行為があった。書籍で読んだ限りでは、これを実行するとやはり健康を著しく損なう。筆者がこの話をしたところ、前述の台湾人は「ソイソースを飲むというのは、自分も聞いたことがある」という。ちなみに隣にいた韓国人はこの方法を知らなかった。

 身体的な特徴(問題)を抱える人も、兵役を免除されることがあるようだ。例えば事故などの理由で親指がない人は、軍隊に入らずに済むという。銃の引き金がうまくひけないのが理由だそうだ。ひじの角度が外側にそりかえっていて、ライフルをきちんと構えられない人も兵役を免除される。さらに、背があまりに高すぎる人も「ぴったり合う制服がない」という理由から兵役を逃れられるらしい。各国の政府に確認していないため、真偽のほどは不明。ただ戦力にならなければ、軍隊から除かれるというのは本当だろう。

 お金があって、医者にコネがあるなら「膝の手術を受ける」という方法もある。わざと膝を切開してもらい、「膝を手術しました」という証明書を書いてもらう。これにより、歩く走るといった基本動作が通常の人間より劣るため、軍隊には不適と判断される。韓国では、芸能人などがこうした方法で、兵役逃れをしているとの噂がある。こちらも真偽のほどは確認のしようがないが、日本でも有名なある俳優もこの方法で兵役逃れをしたとか……?

兵役は、「時間の無駄」なのか「誇り」なのか

 ここまで書くと、台湾や韓国のMBAの生徒は兵役を「逃れたい」と考えているように思われる。一方で、兵役をきちんと勤め上げて「部下を上手く管理した」ことをアピールする生徒もいる。軍隊というのは厳しい場所だけに、上司が部下をきちんとケアしないと脱走したり、一種の精神的な病気にかかったりするケースもあるらしい。こうした部下を出さなかった、というのがアピールになるそうだ。

 前述のハーバード在学の韓国人に、兵役を勤め上げた感想を聞いてみた。彼は第一声、「兵役なんて時間の無駄だ」とした上で「自分はズルをして兵役を逃れることはしなかった。その点は誇りに思っている。また、軍隊生活は確かに厳しいが、苦痛の連続というわけでもない」と話す。

 例えば、ある日仲間が酒を入手して、部隊に持ち込んだ。そのままにしておくとバレる可能性があるため、屋外の練習場所にこっそりと隠しておいた。酒を隠した場所で練習があるたびに、参加した仲間が顔を赤くして隊に戻ってくるという。顔が赤いことを上司から聞かれると、「昨晩から風邪気味で、その影響だと思います」と誤魔化していたそうだ。

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