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» 2007年09月25日 19時12分 公開

新車購入の負担感を減らすには? 自動車メーカーのあの手この手神尾寿の時事日想

クレジットカードを使ってポイントをためると、クルマのローン支払いに還元できる――トヨタ自動車「使ってバック」は、国内市場での新車販売不振に悩む自動車メーカーにとって、“異業種他社との連携”という観点で注目すべき取り組みだ。

[神尾寿,Business Media 誠]

 9月21日、トヨタ自動車とトヨタファイナンスが、トヨタの新車購入のクレジット支払い(分割払い金)に、トヨタファイナンスのクレジットカード「TS CUBIC CARD (以降、TS3)」の利用で貯まるポイントを活用できる新商品「トヨタならポイントが支払いをお手伝い 使ってバック(以下、使ってバック)」を発表した(プレスリリース・PDF)。全国のトヨタ販売店を通じて9月26日より同サービスが販売される。

クレジットカードのポイントを、新車のローンに回せる

 トヨタでは、以前からトヨタファイナンスのTS3で蓄積したポイントを“トヨタ車購入時のポイント還元=実質的な値引き”という形で利用できた。さらにTS3はポイント有効期限が5年と長く、トヨタ車購入時のポイント還元率を「1ポイント=1.5円」と高めに設定している。例えば5年間で5万ポイントを蓄積すれば、トヨタ車の新車購入時に7万5000円分の還元が受けられる。TS3のポイントプログラムは、「自動車の買い換えサイクルに合わせて貯めやすく、しかも使いやすい」(トヨタファイナンス常務取締役カード本部長、塘信昌氏)ものとして、トヨタの新車販売を支援してきた。

 今回の「使ってバック」は、TS3の“ポイントによる新車販売支援”をさらに強化するものだ。詳しくは下図を見てもらうと分かりやすいが、「使ってバック」では、クレジットカード利用額に応じて付与されたポイントを、毎月のトヨタ車クレジット販売の支払額に対して還元できる。クルマ購入後のローン支払いという“ランニングコスト”の部分に、クレジットカードのポイント還元を行うというのは、国内初の試みである。

「使ってバック」の仕組み。最小300ポイントから、翌月に還元される

“他社からの乗り換え”と“クレジットカード利用促進”にフォーカス

 これまでのTS3のポイントプログラムでは、「蓄積したポイントを次のクルマ購入時に高く還元する」ことで、トヨタ車からトヨタ車への乗り継ぎを促進、囲い込みをする狙いがあった。しかし、今回の使ってバックでは、TS3のポイントは毎月還元されてしまうので、乗り継ぎ促進・囲い込み効果は従来よりも薄くなる。むろん、ポイント還元をすぐ受けたいという利用者ニーズはあるだろうが、トヨタの狙いは他社からトヨタへの「乗り換え促進」の方にあると言える。

 トヨタファイナンスのTS3所有者は、“トヨタ車購入時に加入する”利用者が大半を占めている。提携カードのJOMOカード所有者など一部の例外はあるが、トヨタ車に乗っている人以外のTS3所有率は低く、当然ながら新車購入時にポイント還元を受けるためのポイント蓄積そのものがない。TS3のポイント恩恵を受けられるのは、次にトヨタ車に乗り継ぐ時からだ。しかし、「使ってバック」ならばトヨタ車購入時にTS3に加入し、サービスを登録すれば、1台目のトヨタ車のクレジット支払いからポイント還元の恩恵が受けられる。クレジットカードのポイント還元で「毎月の支払いが減る」というのは消費者にとって魅力的であり、クルマ購入の金銭的負担感を軽減するのに効果がある。他社からトヨタへの乗り換え促進を支援する要素の1つにもなるだろう。

 一方、トヨタファイナンス側から見ても、今回の「使ってバック」はクレジットカードの利用促進という点で効果的だ。獲得したポイントが、すぐに毎月のクルマ支払額への還元として使われるので、その効果が見えやすくなる。ポイント獲得意欲を刺激することは、TS3のメインカード化に貢献する。

クルマ所有の“割高感”をいかにして払拭するか

 今年に入ってから、自動車業界関係者との意見交換でよく出るテーマが「消費者がクルマの購入・所有に対して抱く割高感」についてだ。クルマの性能やステータスに憧れや価値を抱く消費者が減少する一方で、コストパフォーマンスを見る目はシビアになり、「自らのライフスタイルにとってその金額が妥当かどうか」が重視されるようになっている。

 また、ランニングコストにおける「割高感」の高まりも、新車販売の逆風になっている。これはガソリン価格高騰が主たる原因だが、都市部を中心とした駐車場料金の値上がり傾向、高止まりする自動車関連税も“クルマ所有は割高”というイメージに繋がっている。首都圏だけでみれば、今回発表された、首都高速道路の新料金プランも“実質的な値上げ”と消費者に受け取られかねず、都民のクルマ離れを後押しするひとつの要因になりそうだ。

 これまで自動車メーカーは国内新車市場の低迷に対して、新車購入時(イニシャルコスト)での値引き合戦や低価格車投入などを繰り広げてきたが、今回の「使ってバック」は納車後のローン支払い分というランニングコストの割高感や負担感の軽減にフォーカスしたところが斬新だ。しかもトヨタとトヨタファイナンスのビジネスモデルにおいて、WIN=WINの関係が築けている。

 クルマの購入だけでなく、所有・維持における割高感をいかに払拭するか。イニシャルコストだけでなく、ランニングコストの領域まで目を広げれば、ポイントや走行マイレージなどを媒介に、自社グループや異業種他社との様々な連携サービスの可能性がある(8月24日の記事参照)。「いいクルマ」だけでなく、消費者心理や市場トレンドを先取りした「いいサービス」も作ることができる柔軟性が、今の自動車メーカーには求められている。

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