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» 2007年11月19日 00時00分 UPDATE

藤田正美の時事日想:「損失が読めない」――泥沼化するサブプライムローン

総額5000億ドル(55兆円)を超えるサブプライムローン。まだまだ返済不能に陥る債務者が増えるかもしれない。「日本円で22兆〜33兆円の損失が出る」という声もあり、実体経済への影響が懸念される。

[藤田正美,Business Media 誠]

著者プロフィール:藤田正美

「ニューズウィーク日本版」元編集長。 東京大学経済学部卒業後、「週刊東洋経済」の記者・編集者として14年間の経験を積む。1985年に「よりグローバルな視点」を求めて「ニューズウィーク日本版」創刊プロジェクトに参加。1994年〜2000年に同誌編集長、2001年〜2004年3月に同誌編集主幹を勤める。2004年4月からはフリーランスとして、インターネットを中心にコラムを執筆するほか、テレビにコメンテーターとして出演。ブログ「藤田正美の世の中まるごと“Observer”」


 サブプライムローン問題については先週先々週も書いたが、状況は日増しに悪くなっているようにも見える。シティグループだけでも、サブプライムローン絡みで7〜9月期に約64億ドル(約7040億円、1ドル110円換算)の損失を計上したが、さらに10〜12月期には80億〜110億ドル(約8800億円〜1兆2100億円)の追加損失を計上する見込みとなって、チャック・プリンスCEO(最高経営責任者)が辞任した。

 シティにこれだけ巨額の損失をもたらしているのは、いわゆるCDO(資産担保証券)である。このCDOの裏付けとなっているのがABS(資産担保証券)で、そこに問題のサブプライムローンやら何やらの債権が原資産として入っているという構造だ。そうした投資商品を作ったのは、格付けの高い債券は金利が安い(ローリスク・ローリターン)が、それを少しでもハイリターンにするためである。それによって、金融機関や投資家はこうした金融商品を自社の運用資産としてきた。例えばシティは、約430億ドル(4兆7300億円)に及ぶCDOを保有しているという。

 ところがサブプライムローンの返済不能が急速に増えているため、格付けが高かったCDOの価格も急落している(10分の1にまで価格が下がったものもあるという)。もっともこの価格というのが、それほど流動性があるわけでもないため、どこまでCDOの実際の価値を表しているのか疑問だ。ここもまた、今回のサブプライムショックの1つの理由になっている。

 金融機関が損失の引当金を計上したと言っても、実際に処分できるかどうかは不透明であるからだ。その意味では、サブプライムローンを中心にして、もともとの債権が不良債権化してきたときに、さらに価格が下がるということも十分にある。こういう理由で金融機関は「損失が読みにくい」としている。

返済不能になる債務者は増える

 懸念する材料は少なくない。まず総額が5000億ドル(55兆円)を超えるサブプライムローンは、来年に入ると支払い金利が増える契約になっているものが多く、その分だけ返済不能になる債務者が増えるだろう。(支払い金利が後から雪だるまのように増える方式でないと、低所得者には貸せなかったためである)。したがって来年になればCDOの格付けはさらに下がり、結果的に価格もさらに下がる。そうなるとCDOを保有している金融機関は評価損を計上せざるを得ず、しかも底値が見えなければ、さらに損失が膨らむ可能性があるということだ。

 実際、格付機関はさらに500億ドル分(5兆5000億円)のトリプルAマイナスのCDOを格下げするとしているが、これでもまだ「氷山の一角」と英国のエコノミスト誌は指摘している。格下げになるとトリプルAの金融商品しか保有できない機関投資家は、当然、格下げされたCDOを処分しようとする。それがさらにCDOの価格を下げるという悪循環に陥る可能性もあるという。

実体経済への影響は必至

 FRB(連邦準備制度理事会)のバーナンキ議長は、このサブプライム・ショックが始まった今年の夏ぐらいは、500億ドルから1000億ドル(5兆5000億円〜11兆円)の損失という一部の見通しを裏書きするように発言していたが、最近は「最悪の数字をさらに上回る」とやや悲観的。ある専門家は、サブプライムローン関連やそのほかも合わせれば、「総額で2000億ドルから3000億ドル(22兆円から33兆円)の損失は出るだろうし、場合によってはもっと膨らむ」と語っている。

 日本の金融機関でも、米国を舞台にこうしたCDOに取り組んできた野村證券やみずほグループが大きな損失を出しているが、欧米金融機関の損失はそれをはるかに上回る規模だ。CDO総額の45%を保有しているとされるヘッジファンドや保険会社なども、今後の動向次第ではかなり大きな打撃を受けるはずだという。

 こうなってくると、実体経済にも相当大きな影響が出るはずだ。例えば金融機関が通常のプライムローンですら貸し出しを渋るようになっている。それで実態以上に住宅が売れなくなれば当然、悪影響がでるだろう。バーナンキ議長は、景気の悪化と原油価格の高騰やドルの独歩安などによるインフレ懸念とのバランスをどう取るか、さらにむずかしい舵取りを迫られることになる。当面、金融機関の四半期営業報告から目が離せない。

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