売上構造としては、約1億円の年商のうち、コンサルテーション&プロデュース業務が60%、インターネットサイトの広告収入が40%を占めるという。ラーメン業界におけるコンサルテーション&プロデュースとは、具体的にどんな業務を指すのだろうか?
「分かりやすく言えば、2つあります。まず1つ目ですが、全国各地に“ラーメン博物館”的な施設が出来ているのをご存知でしょうか? 人気ラーメン店を集中出店させる商業施設なのですが、その開発に際して、どんなラーメン店に出店してもらうのが良いかアドバイスしたりするんです。
2つ目は、食品メーカーやコンビニなどが、いわゆる『店主もの』のような特定の人気ラーメン店の味を再現するような新商品を出すにあたっての知恵出しをしたりします」。
大崎氏の活動拠点は東京にある。しかし氏は1998年ごろから、土曜日と日曜日を使って全国各地のラーメン店を回るようになった。
「地方に行く場合は、1日に8軒を基準にしています」
1日に8軒!? その数字に唖然としていると、氏は次のように続ける。「それには、2つのパターンがあります。午前11時を起点にして、1時間ごとに1軒行くというAパターンと、昼間に3軒、夕方3軒、夜2軒というBパターンです」
そして、大崎氏はさらに驚くべきことを口にした。「そういえば、1日に11軒回ることもありましたね」
「……11軒!?」驚いている筆者に笑いかけながら、こう話す。「でも、地方に行く場合は、1軒でも多くラーメン店に行こうとするために、その地方ならではのグルメを全然堪能できないのが残念ですね(笑)」
1日にラーメン店を8軒とか11軒なんて、普通回れる数ではない。本当に1軒1軒ちゃんと食べているのだろうか? 1口か2口、味見するだけではないのか?
「確かに、そういう評論家も中にはいます。でも私は、ラーメンが大好きですし、ラーメンに申し訳ないので、固形物は全部食べます。スープについては、その時の気分やコンディション次第で、少し残す場合もあります」
しかし、1軒目と11軒目とでは、明らかに味の感じ方は違うのではないか? 「いいえ、そんなことはありません。1軒目も11軒目も同じようにおいしく頂けますよ」と涼しく笑う。
……やはり、一芸に秀でる人は、人とは違う何か特別な資質をもっているのかもしれない。それは一体何なのだろうか。
「大きく分けると4つあります。第1に、記憶力が良いことです。なぜなら、数千軒レベルで、ラーメン店の情報を頭の中で整理できていなければいけません。例えば仕事の席で、ある地方の特定のラーメン店の特徴について即答することが求められたりするわけですから。
第2に、胃が強くキャパシティがあることです。地方に食べ歩きに出て1日に8軒とか11軒、回るのですから、量が食べられる人でないと務まりません。第3に、太らない体質でしょうか。“ラーメンを食べると太る”というイメージは望ましくないですから。第4はやはり、食べ物の好き嫌いがないということでしょう。世の中には、いろいろな食材を使用した特徴あるラーメンが存在しますが、好き嫌いがあるためにそれが食べられないとなると、そもそも仕事になりません」
なるほど、上記4つは重要なのだろう。しかし、大事なことが抜けていないか。味覚の鋭さこそが最も重要な資質なのではないのだろうか? 大崎氏は「私の味覚は全然鋭くなんてありませんよ。ごく普通のラーメンもおいしく食べられますし」と謙遜するが、伺ってみると、舌の鍛錬は怠っていないようだ。日常生活の中ではラーメンに限らずさまざまなジャンルの名店の味を巡っているそうで、特に「ミシュランガイド東京2008」に掲載されているレストランのうち、フランス料理店の4割(3つ星店に関しては全店)に行ったという。
やはり、各種一流の味を経験し、それを舌に記憶しておけることは大事な要素なのであろう。これが、第5の資質ということか。
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