全長3メートル前後の「超小型車」が注目されている。
10月2日にフランス・パリで開催された「パリ国際モーターショー」。ハイブリッドカーと並び、このイベントで注目を集めたのが、この超小型車だ。トヨタ自動車は日欧で10月に投入する「iQ」を積極展示。一方、超小型車の草分けであるダイムラーの「スマート(smart)」は、主力モデルである「フォーツー」に電気自動車(EV)仕様を投入した。
これら超小型車が注目される背景には、ひと頃より収まったとはいえ高値水準に留まる原油価格と、何よりも世界的なCO2排出量削減の機運がある。欧州をはじめ日本・北米でもCO2排出量規制は厳しくなる方向であり、ユーザーの環境意識も高くなっている。また、日本などアジア各国や欧州では都市化傾向が進んでおり、「都市のクルマ」としての超小型車にも注目が集まる。
筆者は先日、トヨタの超小型車「iQプロトタイプ」に乗る機会を得た(参照記事)。iQは小さくても、しっかりと走る高効率なパッケージを実現しており、デザインや質感のレベルも高い。また、新開発の「SRSリヤウインドウカーテンシールドエアバッグ」の搭載など、各種先進安全装備の発達により、超小型車でも普通車に負けない安全性を実現している。プロダクトとしての超小型車は、十分に一般ユーザーに訴求できるレベルに達している。
しかしその一方で、iQなど超小型車がそのメリットをユーザーに伝え切るには、「新たなクルマとしての魅力」だけでは不十分だと筆者は考えている。駐車場や道路などインフラ側に、超小型車専用のインセンティブが必要だ。
例えば、一足先にスマートが普及した欧州の都市部では、全長3メートルという“小ささ”を生かした「スマート専用駐車場」が整備されている。ここにはスマートのシルエットがアイコンとして描かれており、スマートオーナーは一般駐車場の混雑や、駐車場のない都市内部でも、専用駐車場にサッとクルマが駐められる。また、全長の短いスマートならば、欧州各都市で見られる路肩への縦列駐車スペースが、一般車よりも有利に確保できるというメリットもある。
再びiQに目を向けると、全長は2985ミリと3メートル以下だが、全幅が1680ミリの普通車サイズ。トヨタ関係者によると、「(日本の)駐車場の『軽自動車専用スペース』は全長分が普通車サイズでないだけで、全幅は他の駐車スペースと同じ場合が多い。ほとんどの軽自動車駐車スペースに、iQも駐められる」という。だが、都市部を中心に“超小型車シフト”を促すには、欧州のスマート専用駐車場のように、お洒落かつシンボリックなデザインを添えて、マイクロカー専用駐車場を整備するほうが効果的だろう。
トヨタのiQを筆頭に、都市部向けの超小型車や小型車は今後さらに増えてくる。話題のEVも小型車ベースの開発が中心だ。これら「小さいクルマ」にあわせた専用の道路周辺インフラやサービス作りは、新たなビジネスの可能性を秘めているのではないだろうか。
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