今年に入ってから、これらエリア限定ワンセグが注目される背景には、4マス媒体※の価値と広告効果が低下していることがある。特に「テレビ」は、視聴者のテレビ離れと、ネット広告に比べて効果測定が曖昧という点がスポンサーに嫌忌され、その媒体価値が急速に下落している。今年、大手民放キー局が軒並み赤字となったことからも、それは明らかだろう。テレビをはじめとしたマス媒体の広告ビジネスは、多様性と実効性が重視される中で、時代遅れになってきている。
このような4マス媒体の価値低下の中で、注目されてきたのが、デジタルサイネージやエリア限定ワンセグといった“特定のエリア”にひも付いたローカル性のあるメディアだ。これらはマスメディアに比べて低コストかつきめ細かな運用が可能であり、場所とテーマ性をきちんと結びつければ、マス媒体よりも高い広告効果・訴求効果が得られる。広告ビジネス全体が、露出重視から効果重視に移行する中で、新たなメディアの1つとしてエリア限定ワンセグへの期待が高まっているのだ。
とはいえ、現在のエリア限定ワンセグは、今すぐに「新たなメディア」として台頭できるレベルにはない。ワンセグ対応の携帯電話を使うため、受信端末の普及数そのものは十分だが、エリア限定ワンセグを視聴するためのチャンネル設定が難しく、使い勝手の点で課題を多く抱えているからだ。実際に新たなメディアとして定着するには、ユーザビリティーの改善や視聴への誘導をどのように行うかなど、クリアすべき点は多々あるのが実情だ。新たなサービスや広告メディアとして“成長するのではないか”と目ざとい業界関係者が注目しているが、それにはキャリアやメーカーが中心になり、エリア限定ワンセグが使いやすい端末とサービス環境を作る必要があるだろう。
“エリア限定ワンセグ”が業界のバズワードで終わるか、それとも新しいメディアとして定着するか。今後1〜2年が試金石となりそうだ。
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