著者プロフィール:郷 好文
マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・実行、海外駐在を経て、1999年より2008年9月までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。 2008年10月1日より独立。コンサルタント、エッセイストの顔に加えて、クリエイター支援事業 の『くらしクリエイティブ "utte"(うって)』事業の立ち上げに参画。3つの顔、どれが前輪なのかさえ分からぬまま、三輪車でヨチヨチし始めた。著書に「ナレッジ・ダイナミクス」(工業調査会)、「21世紀の医療経営」(薬事日報社)、「顧客視点の成長シナリオ」(ファーストプレス)など。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン」
いよいよクリスマス。街角も住宅地もキラキラのイルミネーションでいっぱい。金融危機の到来でパッとしない年になったが、「せめて、電飾の灯りでほっとしたいね」という街の表情がある。
私の手元に、電飾とはひと味ちがう灯りがある。恐らく日本にまだ1つしかない“風任せな”灯りだ。英国のFirewinder(ファイアウィンダー)社が開発し、先頃出荷を開始した風力LEDライト「Firewinder(ファイアーウィンダー)」だ(会社名そのまんま)。
以前、英国の発明家トム・ロートン氏のインタビューをこの連載で取り上げた。彼のアイデアが遂に製品となったので、初回生産出荷分からいち早く入手したのだ。これが世紀の大発明なのか、それとも大失敗なのか気になるところ。風任せな灯りをショート動画(13秒)でみてほしい。
風力LEDライト、ファイアーウィンダーとはいったい何なのか? そしてトム・ロートンさんは、さまざまな灯りに満ちたこの世界でなぜ“風任せの灯り”を開発したのだろうか?
英国からの空輸便で着いたファイアーウィンダー、筒状の梱包(こんぽう)ボックスに本体とブラケット(金具)、留め具、説明書だけという簡素さ。パッケージングもエコである。本体価格は99.95ポンド(円高の恩恵で約1万4000円)。
特徴は次の通りだ。
LEDライトを縁に内蔵する羽根の形状は複雑だ。羽根の直径は約15センチメートル、全長は約64センチメートル。本体の上下を留めるブラケットは、板きれや家の壁などに自分で取り付ける(木ネジなどを利用)。金具からの着脱は容易だ。
同社マーケティング担当のジョー・ワズワースさんの書く「Firewinderblog(ファイアーウィンダーブログ)」には、ユーザーたちの設置例が掲載されている。
設置しているのは家の壁、屋上、庭など。風の通り道を探すことが大切だ。回り出す目安の秒速3メートルとは葉が揺れる程度の風速で、ちなみに強風の春一番では秒速20メートルくらい。商品が届いて以来、穏やかな日が多く、なかなか“目視実験”の日が来なかったが、ようやく動画に収めることができた。
しかし……これは果たしてライトなのだろうか?
風任せだから、無風だと何の役にも立たない。スイッチもないのでON/OFFも風次第。しかも屋外に出ないとその灯りを観ることもできない(当たり前だ)。いつ灯りがつくか計算できないので、事業所で利用することは難しい。
例えば温泉地、農道、山道に設置はできるだろう。装飾として美術館や博物館の庭なども似合いそうだ。だが、照明として照度や発光効率はカウントできない。エコではあるが“モノの役に立たない”灯りである。
だが、その回るサマにはいつまでも見入ってしまう。輝きが強まったり弱まったりして動く様子をじっと眺めてしまう。回るLEDランプがこんなに美しいとは意外だ。この回転灯の無用な美しさが何なのかを探るため、照明の機能を図で整理してみよう。
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