過去最大の赤字から立ち直れるか――ソニーの業績修正会見を(ほぼ)完全収録(3/8 ページ)

» 2009年01月23日 13時50分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

営業損益は大幅赤字に転落

 ストリンガー会長に続いて、大根田伸行最高財務責任者がソニーの業績見通し修正の詳細を報告した。

大根田伸行最高財務責任者

大根田 第3四半期の業績がほぼ確定いたしまして、今後の見通しを精査しました結果、当年度の連結業績見通しの修正が必要であるとの結論に至りましたので発表させていただきます。

 まず通期見通しの修正をご説明する前に暫定値ではありますが、第3四半期の連結業績につきましてご報告申し上げます。当四半期の業績については2008年9月後半からの急激な景気悪化により、相当厳しいものになると想定はしておりましたが、年末商戦全体では想像をはるかに超える大変厳しい結果となりました。

 第3四半期の業績は暫定値ではありますが、売上高は約2兆1500億円、営業損失は約180億円、営業損益に含まれる持分法による投資損失は約110億円、税引前利益は約660億円、当期純利益は約100億円となる見込みです。2008年10月時点での見通しとの比較で申し上げますと、当四半期の連結売上高については想定以上の景気の減速、競争激化、為替の影響などにより、10月時点での見通しを25%程度下回る見込みです。

 連結営業損益につきましては、10月時点の見通しを約1400億円下回る見込みです。この主な要因を見ますと、主に日本の株式相場下落の影響により金融分野で約600億円、為替の影響が約400億円、主にエレクトロニクス分野における景気減速、競争激化による影響が約350億円となります。

 なお営業外損益につきましては、主に為替予約による差益の増加によりまして見通しを約580億円上回る見込みです。税引き前利益につきましては約820億、当期純利益は約640億円見通しを下回る見込みです。なおこれらは暫定数値でございますので、セグメント業績の概要などにつきましては第3四半期の業績を発表する1月29日にご説明させていただきたいと思います。

2008年度第3四半期連結業績(出典:ソニー)

 続いて通期業績見込みについてご説明いたします。

 第4四半期につきましても、為替の影響に加えまして、特にエレクトロニクス分野における景気減速による売り上げの減少、価格競争の激化、構造改革による費用の増加などにより大変厳しいものとならざるを得ません。この結果、当年度の通期業績見通しを今から申し上げる通り修正させていただきます。

 売上高は10月時点見通しの9兆円から7兆7700億円に、営業損益は2000億円の利益から2600億円の損失に、税引き前損益は2100億円の利益から2000億円の損失に、当期純損益は1500億円の利益から1500億円の損失にそれぞれ下方修正いたします。なお第4四半期の前提為替レートは1ドル100円前後から90円前後に、1ユーロ140円前後から120円前後に修正しております。

2008年度連結業績見通し(出典:ソニー)

赤字転落の要因は

 連結営業損益の通期見通しは景気減速、競争激化による影響で約2800億円。主に日本の株式相場の下落の影響により、金融分野で約650億円、為替の影響で約600億円、構造改革費用の追加による影響で約400億円となり、合わせて4600億円の下方修正となります。なお営業外損益では主として為替予約により、差益の増加がありますので、見通しを約500億円上回り、税引き前損益につきましては約4100億円の下方修正となります。

2008年度連結業績見通し、要因別の10月時点との比較(出典:ソニー)

 次にエレクトロニクス分野の営業損益見通しにつきましては、市場環境の悪化や価格競争の激化により約2500億円、為替の影響で約400億円、構造改革の追加費用の計上で300億円、持分法適用会社の業績悪化により約200億円、合わせて約3400億円の下ブレを見込んでおります。

 製品カテゴリ別の通期販売台数の見通しについても、液晶テレビで1600万台から1500万台へ、コンパクトデジタルカメラで2400万台から2150万台へ、ビデオカメラで700万台から620万台へ、PCで680万台から580万台などそれぞれ修正いたします。なお市場環境の悪化により、販売台数の見通しは下方修正いたしましたが、シェアとしてはほぼ前回見通しを維持しております。

 続きましてゲーム分野の営業損益については、為替の影響で約150億円、主として売り上げの減少による影響で約150億円、合わせて約300億円の下方修正となり、損失は拡大する見込みです。通期の台数見込みにつきましては、PS3は1000万台の目標に向けて順調に推移しております。PSPは前年度比では増加するものの、残念ながら期待したほどは伸びていないため、期初計画の1500万台に戻します。

2008年度エレクトロニクスおよびゲームの売上台数見通し(出典:ソニー)

 映画分野の営業利益につきましては構造改革費用の追加、景気後退による売り上げの減少、および円高の影響により約130億円の下ブレを見込んでおります。金融分野の営業損益につきましては、主として日本における株式相場の下落などにより約650億円の下ブレとなります。したがいまして、営業損失となることを見込んでおります。また、第4四半期の相場変動が運用損益に与える影響は従来と同様、見通しには織り込んでおりません。そのほかの営業利益につきましては、売り上げの大半を占める音楽ビジネスにおいて、売り上げが想定を下回ること、および構造改革費用を追加することなどにより、約110億円の下ブレを見込んでおります。

2008年度連結業績見通し、セグメント別の10月時点との比較(出典:ソニー)

 また設備投資計画につきましては、市場環境悪化のため約500億円削減し、10月時点見通しの約4300億円から3800億円に修正いたします。このうち半導体事業においては300億円削減し、1100億円から約800億円に修正いたします。残りの200億については、主にスロバキア・ニトラなどの液晶テレビの増産計画の延期一部削減などによるものです。減価償却につきましては10月時点見通しの約4200億円から約4100億円に、研究開発費は5400億円から5300億円にそれぞれ修正いたします。

 金融を除く連結キャッシュフローについては、業績悪化および構造改革費用の増加にともない、前回10月にご説明したよりも悪化する見込みでございます。

2500億円のコスト削減

 このような状況下、私どもとしては次に申し上げますような構造改革を行いたいという風に考えております。まず12月9日にエレクトロニクスの事業領域において投資計画の見直し、製造事業所の統廃合、人員の最適化などの施策を通じて、2009年度末には1000億円以上の費用削減効果を実現できる体制を構成する旨を発表いたしました。

 その後、日を追うごとに悪化する事業環境を前に、これらの施策への追加、および実行時期の前倒しを行うこととし、またエレクトロニクス以外の映画、音楽、ゲームなどの事業領域においても構造改革の実施によりコスト削減を図ることといたしました。

 さらに構造改革以外でのコスト削減として、全セグメントにおいて広告宣伝費、一般経費、物流費など、諸費用の大幅な削減を実施することとし、以上すべてを合計して2009年度にはグループ全体で2008年度に比べて、約2500億円の費用削減効果を実現していく所存です。なお、今申し上げました構造改革にかかる費用につきましてはグループ全体で2008年度に約600億円、2009年度に約1100億円を計上する見込みです。

 また、以上の数字には含まれておりませんが、すでに発表しておりますように持分法適用会社であるソニーエリクソンにおいても、2008年から2009年にかけて構造改革諸施策を実施し、合計で約3億ユーロの構造改革費用を計上し、約4億8000万ユーロの費用削減を計画しております。

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