予想PERが36.05倍……下で口を開ける日経平均3000円台の恐怖現役東大生・森田徹の今週も“かしこいフリ”(1/2 ページ)

» 2009年02月10日 07時00分 公開
[森田徹,Business Media 誠]

著者プロフィール:森田徹

1987年生まれ、東京大学教養学部文科二類在学中(4月から経済学部経営学科に進学予定)、聖光学院中高卒。現在、東大投資クラブAgents自民党学生部東京大学裏千家茶道同好会のサークルに所属している。投資・金融・経営・政治・コンピュータ/プログラミングに興味を持つ。日興アセットマネジメント主催「投信王 夏の陣」総合個人優勝、リーマン・ブラザーズ寄付講座懸賞論文最優秀賞。


 テスト勉強に執筆にと、筆者はこの2月とても忙しい。忙し過ぎて、ニュースや指標の確認も怠っているというのだから、自称「学生投資家」失格といったところだろう。とはいえマーケットは平穏そのもので、下値は固く上値は重い。つまりは週末の米雇用統計に向けてほとんど動いていなかった上、筆者自身ポジション(投資家がどのような買い・売りを行っているかという状況)を持っていたわけでもないので、実体経済悪化のニュースにもあまり気を止めていなかった。

 そんな中、実に1週間ぶりに日経平均株価の予想PERを確認してみると、36.05倍……。“目を疑う”とは、まさにこのことだろう。

PERとEPSのおさらい

 PERとは「Price Earnings Ratio(P/E Ratio)」の略称で、日本語では「株価収益率」と訳される指標である。株価を1株当たり利益(EPS:Earnings Per Share)で割ったものだ。

 株式の世界ではほとんど常識に近い数字だが、しかしPERそれ自身は何の意味も持たない。逆数をとって、初めて意味をなしてくる指標なのである。

 株式は、債券と同じような金融商品の世界の住人だから、その価値はそれが生み出すキャッシュフローであるEPSから逆算される。例えば、マーケットがある株式のリスクに対して10%のプレミアムが相当だと判断すれば、

 株価=EPS÷10%

 ということになる。このリスクプレミアム(リスクに応じて投資家が期待する上乗せ分の収益)の逆数をとったのが、PERである。すなわち予想PERが36.05倍ならば、このリスクプレミアムに相当する部分はたったの2.77%ということになる。これを「期待収益率」という。

 日経平均株価は業績予想通りの結果を出したところで、来期は株価の2.77%の利益しか生み出さないと言うことだ。単純な比較はできないが、これは格付けAランクの社債利回り(2月6日時点で2.21%)と同程度である。

 株式の期待収益率は、リスクフリーレート(無リスク金利)たる長期金利に株式プレミアムを上乗せしたものだ。株式プレミアムとは、株式リスクをとってくれた投資家に対して企業が支払う“おまけ”のようなものである。また企業は成長するものとされているから、ここからさらに期待利益成長率を割り引く。

 すなわち、

 株式の期待収益率=長期金利+株式プレミアム−期待利益成長率

 ということだ(詳しいことはDCFモデルについて論じている文献をあたってほしい)。

 この株式プレミアムは日経平均株価の場合では通常5〜6%とされている。また執筆時現在(2月9日)で、長期金利は1.330%であり、現在の市況では利益成長など期待できないから期待利益成長率をゼロ以上に見積もることはできない(利益成長率は予測しにくいが、一般的にGDP名目成長率と相関するといわれている。2009年度のGDP名目成長率見通しは、日銀−2.0%、政府+0.1%、民間シンクタンク集計は−1.6%〜+0.7%の平均−0.7%である。日銀のものは2009年1月22日と直近なので、より信頼性が高いだろう)。

 そうすると、期待収益率は低く見積もっても

 1.330%+5%−0%=6.330%

 となる。すなわち、どんなに高く見積もったところで、予想PERが15.80倍以上になるのはファンダメンタルズ的には“おかしい”としか言い様がない。

 そして実際の予想PERは36.05倍、予想EPSが224円。いやはや全く勘弁してほしい。

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