コラム
» 2009年03月19日 07時00分 公開

出版&新聞ビジネスの明日を考える:現場で感じた……“週刊誌離れ”が進む理由 (2/3)

[吉富有治,Business Media 誠]

手軽にスクープのおこぼれにあずかれる

 週刊誌離れが起こっているのは、1980年代のように度を超した取材方法やプライバシー侵害などがあらためて問題視されたからではない。確かに、以前に比べて人権感覚が発達したことで、名誉毀損裁判などで週刊誌が訴えられるケースは増えているが、これが部数減につながっているとは思わない。原因は複合的で決して単純ではないが、1つには「わざわざ買ってまで読みたいとは思わない」という人が、かなり増えてきているからだ。

 その最大の理由は、やはりインターネットの急速な進歩だろう。研究者やマニアが使っていた時代と違い、今ではネットにつながったPCや携帯電話があれば、週刊誌を買わなくても概要が分かってしまう。週刊誌を買った人がネットの掲示板で中身を紹介することもあるが、近年ではワイドショーやスポーツ紙が週刊誌のスクープを先に報じて、その内容が掲示板にも流れていく。インターネットの普及でこのサイクルが一気に加速、週刊誌離れに一層の拍車をかけているのだ。

 余談だが、テレビや新聞などが発売前の週刊誌を手に入れ、その記事を元にして取材に動いたり、ワイドショーで紹介されることがある。週刊誌や月刊誌などの雑誌は、書店に並ぶ前日にはすでに印刷が終わり、取次店から全国の書店へと発送されていく。発売前の雑誌を「早刷り」と呼ぶが、メディア間の相互協定により、この「早刷り」を各メディアは流通過程で手に入れることができるのだ。むろんテレビや新聞だけではなく、週刊誌も同様である。とくに発売日が同じ週刊誌の編集部は互いに、ライバル誌が明日、どのような記事を書いてくるか戦々恐々としているものだ。

 ところが、いつのころからか「早刷り」を見たワイドショーやスポーツ紙が、特に芸能ニュースを週刊誌より先に報道してしまうケースが増えてしまった。これなら自社のスタッフを使わずとも、手軽にスクープのおこぼれにあずかることができるからだ。一応、番組担当者や新聞の担当デスクは週刊誌編集部に事前の許可をもらってはいるが、中には許可も取らず勝手に報道してしまうこともある。

 また芸能ニュース以外でも、新聞社などは週刊誌の記事に社会性があると判断すれば、「一部週刊誌によると」という表現で紙面を割くことがある。これなどはまだ良心的な方で、中には「○○であることが、分かった」と、まるで自社の独自取材でネタをつかんできたかのようなひどいメディアもある。誰のおかげで「分かった」のか、てんで知らんぷり。

 ちなみに、前回紹介した星野仙一元監督の勇退スクープも、「早刷り」を読んだ通信社が元監督に確認。ウラが取れたので記事が配信され、全国紙が一面で扱うほどの大騒ぎになってしまった。このとき「一部週刊誌によると」と発信源を明かしたメディアは、わずかだった記憶がある。

 読者にとって週刊誌が唯一の情報源だった時代と比べ、今では週刊誌が報じた主要なニュースはインターネットをはじめとするほかのメディアに拡散され、ほぼ発売と同時期に、しかも無料で知ることが可能になってしまった。これなら「わざわざ買ってまで」読まなくても、ニュースの概要くらいなら知ることはできる。編集部が満を持してスクープを放っても、予想より売れないのは、以上のような理由からだろう。

 それでも手にとって読みたいというコアな読者だけが、今の週刊誌をかろうじて支えている。週刊誌の作り手にすれば由々しいことだが、もはやこの流れは誰にも止められないかのようだ。

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