マスコミは“斜陽産業”? 週刊誌が生き残る条件とは出版&新聞ビジネスの明日を考える(1/3 ページ)

» 2009年03月27日 07時00分 公開
[吉富有治,Business Media 誠]

  すでに各メディアが報じているが、米シアトルの老舗日刊紙『シアトル・ポスト・インテリジェンサー』が、146年も続いた紙の発行を3月17日をもって中止し、インターネットのオンライン紙面に完全移行する。原因は広告収入の激減だ。事業の規模を縮小し、145人いた編集スタッフの大部分はリストラ。わずかな記者だけがオンライン版に残るという。今後、シアトル・マリナーズでのイチロー選手の活躍を同紙で知るには、インターネットの紙面でしか読めないわけだ。

 広告収入が減ってきているのは『シアトル・ポスト・インテリジェンサー』だけではない。有力紙『ニューヨークタイムズ』も購読と広告の減少で経営難に陥り、地域版などのページを減らすという。このため印刷部門で働くスタッフの残業代がカットされ、メキシコの大富豪から200億円規模の緊急融資を受けることでホッと一息つく有り様なのだ。名だたる新聞社にしてこの惨状だから、地方紙の現状は推して知るべし。米国では今後、休刊やオンラインへ移行する新聞は増えると予想されている。

この世に“不沈空母”など存在しない

 米国と同じように日本でも将来、休刊やオンラインへ移行する新聞は増えると予想される。これまで経営体質は強固といわれてきた朝日新聞でさえ、半期ベース(連結)で100億円以上の赤字に転落することが明らかになっている。ほかの全国紙や地方紙も今後、厳しい経営を強いられるのは間違いない。テレビ局も地デジの設備投資で莫大な資金を投資しており、そこに加えて広告収入の減収である。収益が悪化し、カネのかかる番組制作はヤメというテレビ局も増えてきた。

 事実、私がコメンテーターを務めていた『ムーブ!』(大阪朝日放送)は高視聴率にもかかわらず、テレビ局の収益減を理由に、3月6日の放送を最後に4年半の幕を閉じた。週刊誌については、これまで述べてきた通り。新聞、テレビ、雑誌の既存メディアは、今や構造的な不況に陥っている。もはやマスコミは“斜陽産業”であるかのようだ。

 私が金融業界紙の記者だった時代、金融機関の合併や倒産など、金融再編を目の当たりにしてきた経験がある。それまで銀行が潰れる可能性などゼロに等しいと誰もが信じてきた。ところが、1997年には北海道の都銀だった北海道拓殖銀行が倒産、四大証券の一角といわれた山一證券も同年に自主廃業。大阪では1995年、国内最大手の信用組合だった木津信組が破たんし、預金の取り付け騒ぎが起こっている。

 一連の事件で、この世に“不沈空母”など存在しないことをあらためて認識させられた。同様に、新聞やテレビも未来永劫、安泰な業種というわけでは決してないのだ。数ある都銀や地銀が合併して少数の銀行に再編されたように、将来、新聞やテレビも再編される可能性は大いにあると感じている。

週刊誌が生き残る条件

 雑誌の話題に戻ろう。

 週刊誌や月刊誌などの雑誌が売れないのは事実である。問題なのは、週刊誌がこの先、生き残れるか否かという点に尽きるだろう。私の考えは、マーケット規模が縮小して雑誌の数こそ減りはするが、しばらくは現在の形のまま存続すると思っている。理由は、紙媒体に対して愛着を持つ購読層がまだまだ多いからである。本を手にとって読まなければ読んだ気がしないという読者は、当分は健在だからだ。ただし、読者に飽きられて淘汰される週刊誌も増えてくる。つまらないヨタ話を書き飛ばす雑誌は、見向きもされなくなるだろう。

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