コカ・コーラ「カンザス計画」とも呼ばれるこの製品仕様変更の顛末はウィキペディアの記述に詳しい。
1975年、米国ペプシコ社の天才マーケター、ジョン・スカリー(後のアップルコンピュータCEO)は、徹底した飲み比べキャンペーンである「ペプシチャレンジ」を仕掛け、「ペプシの味の良さ」をアピールして大きく売上げを伸ばすことに成功した。
追われる不安から、コカ・コーラは製品の味を根本的に変えるという戦略に打って出た。新しい味は、コカ・コーラ発売100年の直前である1985年4月24日に「ニュー・コーク」として市場に投入された。しかし、ニュー・コークは消費者の不評を買い、コカ・コーラには抗議の手紙や電話が殺到する事態に。7月10日に至って、元のコカ・コーラをコカ・コーラ・クラシックとして再び販売せざるを得なくなっていった、という。
「知覚品質(Perceived Quality)」という言葉がある。
知覚品質とは、消費者が商品・サービスを購入するにあたって感じる品質のことであり、商品の機能や性能などの物理的属性に加え、信頼性や雰囲気などの主観的な要素も加味して判断されるものだ。それゆえに、企業が何らかの機能や性能を高めたり、原材料を変更したりと物理的な品質(工場品質とも呼ばれる)を高めても、消費者にとって意味のあることでなければ、知覚品質が高まったとことにはならないのだ。
今回もネットで反発しているのはヘビーユーザーが多いようだ。彼らはまさに、「味の良さ」で食べているわけではなく、まさに、「カップヌードルのイメージ」という「知覚品質を買っている」という状態がうかがえる。
だとすると、製品改定がもたらす新たなポジショニングは、ヘビーユーザーの知覚品質に合わず、離反を招くことが懸念される。
仕様改定されたカップヌードルの発売は4月20日。発売前からこれだけの話題を集めるとは、同製品の人気の高さがうかがいしれるし、事前広告効果もバッチリだ。しかし、その後の消費者の反応は未知数である。一口食べて「確かにうまい!」と腹落ちさせることができるのか、それとも、知覚品質を納得させることができずに、ニュー・コークのような顛末(てんまつ)をたどるのだろうか。
まずは、改訂後の商品を食べてみようではないか。
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