行政と連携した交通ICを目指す――福岡市交通局の「はやかけん」神尾寿の時事日想・特別編(1/3 ページ)

» 2009年04月15日 12時16分 公開
[神尾寿,Business Media 誠]

 全国の地方都市の中でも、福岡は交通ICが集中するエリアになっている。本誌でも紹介したとおり、福岡では2008年5月18日に西日本鉄道の「nimoca」がスタート(参照記事)。2009年3月1日にはJR九州の「SUGOCA」のサービスが始まった(参照記事)。そして、SUGOCA開始から7日後となる3月7日、福岡市交通局の「はやかけん」のサービスが開始された(参照記事)

 nimoca、SUGOCAと続く、福岡第3の交通ICカードとして、はやかけんはどのように展開していくのか。今回の時事日想は特別編として、福岡市交通局の「はやかけん」についてレポートする。

当初から相互利用を意識

 福岡市交通局の路線は、福岡の都心部である「天神」および「天神南」を中心に3方向に伸びている。福岡を東西に貫くのが「空港線」、北東方向に伸びるのが「箱崎線」、南西方向に伸びるのが「七隈線」である。他地域から福岡空港を訪れると利用することになる地下鉄も、福岡市交通局のものだ。はやかけんは、この3路線35駅を対象にする交通ICカードとしてスタートした。

 「(福岡市交通局の)路線の特徴は、福岡都心部と住宅街を結んでいますので、通勤・通学でのご利用が多いことです。また、福岡空港、博多、天神という福岡の主要エリアを結ぶことから、東京など他地域から訪れるビジネス客・観光客にとっても利用機会の多い路線になっています」(福岡市交通局営業部課長の、調浩一氏)

福岡市交通局の路線図(公式サイトより)

 また、もう1つの特徴が、他社とのノーラッチ接続※や乗り換え駅が多いこと。SUGOCAレポートでも紹介したが、空港線の姪浜から先はJR九州の筑肥線に、箱崎線の貝塚から先は西鉄貝塚線に接続している。SUGOCA、nimocaとの相互利用が始まっていない現在は、これらの接続では現金で連絡きっぷを購入する必要がある。

※ノーラッチ接続……途中で改札を通らずに乗り換えられること。
福岡市交通局営業部課長の調浩一氏

 「福岡市交通局の路線では、他社線からの接続でご利用されるお客様が多くいらっしゃいます。ですから、はやかけんの導入計画は平成18年度から始まっていますが、その当初から相互利用化は必須と考えていました」(調氏)

 福岡市交通局では、はやかけん導入の狙いや理由として、「利用者の利便性向上」と「改札機の更新期であったこと」を挙げる。

 「お客様の利便性向上という観点では、全国の公共交通事業者で交通IC導入が進んでいますし、福岡でも他社線が導入しますので我々だけが非対応というわけにはいきません。特に福岡では(JR九州の筑肥線や西鉄の貝塚線との)接続がありますので、我々も交通ICを導入し、相互利用化を進めないと、福岡都心部を訪れるお客様の利便性を損ねてしまいます。

 さらに、もう1つの理由として『改札機の更新期』があります。我々の利用していた改札機がちょうど13年目を迎えて、いずれにしても設備の更新が必要な状況でした。そのタイミングで交通IC導入も行うという計画だったのです」(調氏)

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