最終回「優しい自由主義」のススメ山崎元の時事日想(3/3 ページ)

» 2009年04月30日 08時00分 公開
[山崎元,Business Media 誠]
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筆者が目指す社会は「小さな政府、大きな福祉」

 構造改革ブームの最中には、「働かざる者、食うべからず」といった、過剰な自己責任論が横行したが、「働かない者は、餓死せよ」という世の中よりも「働かなくても、食える」世の中の方がいいに決まっている。全員がどの程度まで「食える」かは、社会の実力に依存する問題であり、あるいは、将来、国民全員を食わせるのは難しくなるかも知れないが、他人が働かないからといって食い物(基本的な生活)を取り上げるのは行き過ぎであり、これも自由主義に反している。

 現実的には多少の無理があることを承知で言うつもりだが、あえてキャッチフレーズにまとめると、筆者が目指す社会は「小さな政府、大きな福祉」だ。そのための道筋は、所得の再配分には優しく、誤魔化しと政府の肥大化には厳しい「優しい自由主義」しかないのではないかと考えている。

 筆者は、経済に関しては自由主義で、政治に関しては自由な経済取引を実現してくれる勢力を応援する一民主主義者だが、防衛などに関しては単純なハト派だ。自由主義に近い立場を持つ人たちには、日本も武装して対外的に軍隊が実力行使できる(彼らのいうところの)「普通の国」になるべきだというようなタカ派が多いが、この点には違和感を感じている。お金持ちは、暴力を使わないと自分の財産が守られないと思って心配になるのだろうか。

 どのみち米国にも中国にも軍事的には到底かなわないのだから、軍備に余計な費用とマンパワーを割かない方が得だし、「国」というものは人の命に代えてまで守る価値のあるものではないと私は考えている。「普通の国」は無駄なお金がかかるし、余計な奴(軍人ないしはそれに近い人々)が大きな顔をするので、願い下げだ。

 軍事力を交渉力に使わないという意味でも「優しい自由主義」を標榜したい。

 これまでのご愛読に感謝します。

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