メイド喫茶の内側は? 現役メイド「あいりちゃん」に聞く(前編)現役東大生・森田徹の今週も“かしこいフリ”(3/4 ページ)

» 2009年05月19日 07時00分 公開
[森田徹,Business Media 誠]

メイドに求められるもの

 現在のメイドに要求されているものを知るために、少しだけアキバのメイド史について触れておこう。

 メイド喫茶の歴史は浅く、前述の正統派メイド喫茶キュアが2001年にリニューアルオープンしたことにその原点を求められるようだ。黎明期のメイド喫茶では黒髪・ロングスカートの正統派が主流である。

 そして2006〜2007年のメイドブームまでに、少しずつ@ほぉ〜むcafeを中心とした萌え系メイド喫茶が台頭してきた。髪の色も黒から茶色へ、スカートの長さも短く、あいりちゃんに言わせれば「チャラい感じ」に変質してきた。そして、メイドブームの中で一気にメインストリームに踊り出る。

 こうした中で、メイドに求められるものも、控えめさや立ち振る舞いといった本来の正統派メイドに求められてきたホスピタリティーから、ノリやビジュアルといったものに変わっていったようである。

 メイドブームの最盛期での就職倍率は、ミアカフェで300倍、@ほぉ〜むcafeで80倍という驚くべき数字で、「今でも大体5倍くらいはあると思う」ということである。その選考基準も厳しく、基本的には一次の書類選考における全身とバストアップの写真でふるいにかける形になるそうだ(ちなみにメイド服の関係で7〜9号の服が着られる、かなり細い子であることも条件らしい)。

 現在はブームの最盛期に比べ店舗数が減少していることから、新規募集の場合もブーム時にメイド業界に入ってきたビジュアル重視のメイドが他店から移ってくるケースが多いようで、「新規に入ってくる子も、ほとんどが経験者」ということだから、そんなに高くない給与にもかかわらず、意識の高いプロフェッショナルな業界になっているようだ。

 またこうした背景から、現在のメイドはアイドルや声優などサブカル関連業界への志望者が多く、基本的には高卒の女性が多く「私みたいな大学生は少数派」とのことである。

 あいりちゃんは「定額給付金のことがメイド同士で話題に出たとき、定額給付金のことを知っている子自体が少なくて、中には月1万2000円もらえると思っていた子までいて……なかなか、そういう話題は難しいよね。いつか、メイドには麻生支持者が多いなんて話もあったけど、政治なんてみんな全然分かってないんじゃないかな?」と言っていた。どこぞの漫画のように、容姿端麗/頭脳明晰の“完璧メイド”さんは、現実には相当希有の存在のようで……まったく、残念だ。

 基本的には後述するようにトーク力もそこまでは求められていない上、アニメやゲームなどについての知識もほとんどが業界志望者・関係者である関係で担保されているので、必然的にルックスさえ見ておけば大丈夫という話なのであろう。

 朗報なのは、メイドはいずれも理解がある人たちなので、萌え系の“チャラい”メイド達も、メイド服を脱ぐと「オタク、キモい」などといった陰口をたたいていることは、まずあり得ないということだろう(むしろ、メイド喫茶の暗黙のルールを知らない冷やかしの観光客の方が気に障るらしい)。そういう意味では、アキバユーザーには安心して利用ができる場所である。

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