オバマのChangeが日本にもたらす悪夢(2/2 ページ)

» 2009年06月08日 12時30分 公開
[竹林篤実,INSIGHT NOW!]
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駐日大使と駐中大使

 米国の中国に対する気の遣いようは、大使人事にも表れている。駐中国大使に指名されたのは、民主党ではなく共和党のハンツマン氏。同氏は中国語に堪能で、中国を理解し、米中間の貿易問題にも精通しているという(関連リンク)

 「一方で駐日大使に決まったジョン・ルース氏はどうか。外交経験はなく、大使としての手腕も未知数(関連リンク)」らしい。少なくとも駐中大使のハンツマン氏が中国語に堪能であるように、ルース氏が日本語に堪能であるということはなさそうだ。そして職歴は弁護士である。

 それでも駐日大使は務まる、との判断が、この人事の背景にはあるはずだ。深読みするなら、日本に対しては特に何科を理解する必要はなく、むしろ弁護士として培ったスピーチテクニックを駆使して論理的恫喝を行え、という指示ぐらいはあったということなのかもしれない。

焦点は中国の「Change」と変わる世界のパワーバランス

 では、中国はこうした一連の米国の動きをどう読むか。千載一遇のチャンス到来、と考えるはずだ。もとより中国にしても経済状況が盤石などとは決して言えない。相変わらず8%程度の経済成長を維持しているとはいえ、内実は相当に危なっかしいのだと思う。

 だからこそ米国が中国に対して絶対に強く出られない現状を、どうすれば最大限、自国にとって有利に活用できるかを考え抜いているところではないだろうか。今のところ目立った動きはないようで、まずは来年の上海万博で、いかに国威を発揚するかが目下の課題なのだと思う。

 けれども、中国がこの好機を生かさないことは考えられない。民主化要求、少数民族問題、資源に環境、格差の進行などなど、およそありとあらゆる社会問題を抱えているのが、いまの中国ともいえる。個々の問題解決に、いまのポジションがもたらす力をどうすれば使えるかを考えているだろう。

 それが行動となった時にアジアのパワーバランスは大きく変わる可能性がある。日本として何より注意しておくべきは、感情的には目の上のたんこぶでありながら、経済的に依存関係にならざるを得なかった日本との関係をどう切ってくるか。

 すでに兆候はあるのだ。レアメタルなどは、いくら金を積んでも日本には(レアメタルの場合、相手国は日本だけに限定していないはずだが)売らない、という判断が下されている。ごくささいなレベルでいえば、割り箸だってそうである。だからコンビニでラーメンを買ったときに「割り箸はおつけしますか」と尋ねられるようになったのだ。じゃ中国産食品はどうなるだろうか。

 また中国が突出し始めた時にロシアやインドはどう対応するのか。米国、中国、ロシアにインドといえば、いずれも日本企業にとっては生命線となり得る重要な拠点でもある。中国の進路とそれが及ぼす影響は、よくよく考えておく必要があると思う。(竹林篤実)

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