著者プロフィール:森田徹
1987年生まれ、東京大学経済学部経営学科在学中、聖光学院中高卒。現在、東大投資クラブAgents、自民党学生部などのサークルに所属している。投資・金融・経営・政治・コンピュータ/プログラミングに興味を持つ。リーマン・ブラザーズ寄付講座懸賞論文最優秀賞、日興アセットマネジメント主催「投信王 夏の陣」総合個人優勝。主な著書に『東大生が教える1万円からのあんぜん投資入門 』(宝島社)
『ブラック・スワン』――本屋の投資本コーナーに足を運んでしまうような方なら、こんなタイトルの本が平積みになり、話題にもなっているということはご存じだろう。かくいう筆者も、本屋に行ったついでに珍しく衝動買いしてしまった。書いてある内容は既に知っていることではあるのだが、文学的に語られると面白く、自戒も伴うという話である。
ブラック・スワン(黒い白鳥)とは、我々の科学が通常用いている帰納的方法論への挑戦だ。あるいは、我々の日常生活における偏狭な“常識”というものをあざ笑う存在でもある。
オーストラリアで発見されるまで、旧世界の人たちは白鳥と言えばすべて白いものだと信じて疑わなかった。経験的にも証拠は完璧にそろっているように思えたから、みんな覆しようのないぐらい確信していた。はじめて黒い白鳥が発見されたとき、一部の鳥類学者(それに鳥の色がものすごく気になる人たち)は驚き、とても興味を持ったことだろう。(ナシーム・ニコラス・タレフ著、望月衛訳『ブラック・スワン(上)』P3、ダイヤモンド社刊)
つまり、今までの何百万羽という観察の結果が、たった1つの例外でくつがえってしまうということだ。帰納的方法論の致命的欠陥である。
同書では「異常であること」「大きな衝撃があること」「後から説明をでっち上げることが可能であること」の3つに当たる事象を“黒い白鳥”として扱っている(今回の金融危機もそれに近い)。著者はクオンツ※出身なので、金融工学が頼りとする仮定(対数正規分布など)への批判を中心に話は進んでいくのだが、ここでは経済や投資の世界を離れて、“黒い白鳥”の思考方法が我々の日常生活の意志決定にどのように生かせるか考えていこう。
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