あなたのそばにいる“優しいヤミ金融”……その実態は?シリーズ“新借金地獄の時代”(1/3 ページ)

» 2009年09月09日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 かつて「トイチ」や「トサン」※などと呼ばれ、高金利で手荒な取り立てをしていた「ヤミ金融」。違法金利の無効化や取立行為の規制を強化した「ヤミ金融対策法」が2004年に施行され、いまでは鳴りを潜めた形となっている。しかし数年ほど前から「優しいヤミ金融」と呼ばれる、新手の業者がはびこり始めているのだ。

※トイチ:10日で1割の金利を要求されること。トサンは10日で3割の金利。

 優しいヤミ金融の特徴は「強引な取り立てをしない」「金利は年40〜50%が多い」といわれているが、その実態は不透明。上限金利29.2%を超える業者もあれば、10%ほどでお金を貸すところもあるという。しかし従来のヤミ金融と違って、彼らはごく普通の市民にも手を伸ばし始めていることが、東京情報大学の調査で明らかになった。

 ヤミ金融対策法が施行されたにもかかわらず、なぜ再び、非合法な業者がうごめき始めたのだろうか。また一般の市民が、なぜ彼らからお金を借りているのだろうか。優しいヤミ金融の実態について、東京情報大学の堂下浩(どうもと・ひろし)准教授に話を聞いた。

消費者金融の市場が“健全化”

 東京情報大学が2009年2月に実施した調査によると、消費者金融大手7社の貸付残高(月末)と新規成約率(月間)は減少傾向にある。特に改正貸金業法が国会に通過した2006年12月以降、貸付残高と新規成約率の減少は一気に進んだ。それまで大手7社の新規成約率は50〜55%ほどで推移してきたが、審査を厳しくしたことで30〜35%に低下。また貸付残高も8兆円以上あったが、2008年12月時点では6兆円を割っており、「もはや消費者金融のビジネスモデルは“破たん”している」(業界関係者)とささやかれるほど、厳しい環境下にある。

 上限金利の引き下げや総量規制※の完全施行前に、消費者金融各社は審査を厳格化。その結果、“貸し渋り”状態に陥ってしまったのだ。さらに過去に顧客が支払いすぎた「過払い利息」の返還訴訟が相次いでいるため、「経営環境は火のクルマだ」(業界関係者)という。消費者金融大手7社の過払い返還請求は増加傾向にあり、2008年12月には月間で479億円にも達した。

※上限金利引き下げ:改正貸金業法によって貸金業の上限金利は、出資法の上限(年29.2%)から利息制限法の上限(元本の金額により年15〜20%)へ引き下げられる。総量規制:個人の借入総額が、原則、年収の3分の1までに制限されること。
消費者金融7社の貸付残高(月末)と新規成約率(月間、左)、過払い返還額の推移(月間、右、出典:東京情報大学、クリックして拡大)

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