また、おサイフケータイが最初の実装例として選ばれた背景には、より現実的な理由もある。現在、ドコモのおサイフケータイで使用されている第2世代のモバイルFeliCaチップ(Favor 2.0、ドコモ端末ではFOMA 903iシリーズ以降に搭載)では、おサイフケータイ同士の相互通信を行う機能が最初から実装されている。そのためCROSS YOUの実装に伴うソフトウェアの手直しが少なくて済むため、最初の導入事例としては最適だったのだ。
「CROSS YOUはミドルウェアとして稼働しますので、機器メーカーに採用していただき、実装を行う必要があります。各デバイスとの調整も必要になりますので、すでに発売済みの機器を(ソフトウェアアップデートで)CROSS YOU対応にさせるのは難しい。基本的には、今後発売されるデジタル機器での採用を狙っていく展開になります」(宮林氏)
FeliCaが得意とする「かざすUI」を軸に、簡単・明快なデジタル機器連携を実現するCROSS YOU。今後はどのように展開していくのだろうか。
「CROSS YOUはプラットフォームとして広く普及させていきたい。ソニーグループのみならず、多くのメーカーに採用していただきたいと考えています。また対応端末のジャンルも、携帯電話やスマートフォンはもちろん、カーナビやPCなどにも展開していきたい」(小林氏)
だが「携帯電話」以外のスマートフォンやパソコン、カーナビでは、“グローバル展開ができるか”という課題が生じる。例えば、今回CROSS YOUの最初の事例となったおサイフケータイは、あくまで日本市場のみでしか普及していない。交通ICと電子マネーが牽引役であるFeliCaの利用環境や、日本市場の携帯電話と根深く結びついたモバイルFeliCaの仕様が、グローバル展開には不利な要因となってしまっているからだ。
このグローバル展開の課題についてCROSS YOUは、FeliCaの利用用途が「ワイヤレス通信の初期設定を行う認証のみ」(宮林氏)に限られていることと、当初からNFC対応を前提にすることでクリアしているという。
「iアプリタッチではFavor 2.0の機能を用いていますが、実はCROSS YOUを使うだけならば、それ(おサイフケータイ)ほどの性能は必要ありません。FeliCa Plugでも実現可能ですし、NFCなど次世代の非接触IC技術にも対応できるようになっています」(小林氏)
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