ひょっとして……“バブル組”に苦しめられていませんか?(2/3 ページ)

» 2009年10月02日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

社員の自殺をめぐる争い

 管理職の問題は後を絶たない。つい最近も、管理職層のマネジメント能力に問題があるのではないか、と思える裁判が一応の決着をみた。

 報道によると、9月5日、東京高裁にて、従業員の自殺をめぐる賠償訴訟で和解が成立した。この労働事件は2005年3月、 運輸会社 の関連会社で働いていた知的障害をともなう自閉症の男性(当時46歳)が自殺したことに始まる。

 遺族は、自殺の理由は上司から厳しい言葉を浴びせられたり、時給を減らされるなど、障害者への配慮を怠ったことにあたるとして、会社に6500万円の損害賠償を支払うように訴えていた。結局、会社側が一定の条件のもと、500万円を賠償することで和解が成立した。

 報道によると、この管理職は男性を厳しく指導したことがあるようだ。 仮にそれが事実であるならば、 部下が自閉症であったことをどこまで理解していたのだろう。 そして、それを踏まえた上での指導をしていたのだろうか。 これでは、管理職としてマネジメントに問題があったと批判を受けても、仕方がないだろう。

 さらに、管理職の権限がかつて(1980年代〜1990年代後半までくらい)に比べると、強くなっていることも忘れてはいけない。この場合の権限とは、部下の採用、育成、評価、配置転換、さらにはリストラの指名なども含まれる。

  強い権限を持つ管理職から厳しく叱責を受ければ、ほとんどの社員は萎縮し、意気消沈していく。これらの権限は、以前は人事部に集中していた。しかしいまは、管理職が持ち始めている。人事部はそれを支援したり調整する、いわば“黒子”になっているのだ。特に、大企業でこの試みは進んでいる。

 こうした動きは、米国企業では早くから取り入れられてきた。従って、一部の識者は「人事のアメリカナイズ」と指摘する。確かに、アメリカナイズされていると思える一部のベンチャー企業は、それぞれの部署の責任者が強い権限を持ち、次々と意思決定をしていく。そのスピードは早く、職場の士気も高い。

 だが、私は、この動きを無条件で賛成しない。権限を強くする前に、管理職たちを教育し、一定の知識やモラルなどを身に付けさせることが先決なのではないか、と考えるからだ。

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