普段着は着物 “和”の人気サイトを運営する男の思いとは郷好文の“うふふ”マーケティング(1/3 ページ)

» 2009年10月22日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の企画・開発・実行、海外駐在を経て、1999年より2008年9月までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略、業務プロセス改革など多数のプロジェクトに参画。 2008年10月1日より独立。コンサルタント、エッセイストの顔に加えて、クリエイター作品販売「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『ナレッジ・ダイナミクス』(工業調査会)、『21世紀の医療経営』(薬事日報社)、『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など。2009年5月より印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載。中小企業診断士。ブログ→「マーケティング・ブレイン


 “和”はブームではなく、日本人の深層美意識だ。

 そう思ったのは、ここ最近なぜか和にひかれたからだ。身の回りの和モノは、和紙名刺入れに和紙ペンケース、和紙ブックカバー、和柄のPCケース(相棒cherryさんに作ってもらった)、漆のマウス、扇子など。プラス和にしたい“もの”や“こと”もある。名刺で活版+和紙に挑戦したい。和柄の傘も欲しい。お香をたいて過ごしたい。手書きの手紙、日本文学の再読、そして和柄の猫も飼いたいな。

 そんな私の甘っちょろい和好きを木っ端みじんに打ち砕く男に会った。彼の名は増田吉孝さん(31歳)。歩く姿はもちろん、暮らしも仕事も“和のこと”でいっぱい。池袋の某喫茶店で待ち受けていると、彼はゆったりと着物姿で現れた。

増田吉孝さん。池袋の雑踏を背景に

 「そのお姿で働いているんですよね?」

 「ええ。会社では机の下にゴザを敷いて、はだしで仕事をしています」

 仕事はシステム開発で、お隣の人はごく普通に靴を履いているそうだ。だが彼は、2年ほど前から普段から着物を着ているという。「えっ」と絶句したのは、パンツではなくて、ふんどしを使っていると聞いた時。

 「慣れるものなのですか?」

 「慣れますよ」と涼しい顔の増田さん。さらしを買って、ふんどしサイズに自ら切って“白ふん”を作った。彼のWebサイト「和の暮らしを楽しむブログ 瑠璃色Tradition」の2年ほど前のエントリーには、初めて着物で生活する様子が書かれている。読んでみると、「帯が(家の)ドアノブにひっかかってビリっとやっちゃった」とある。なるほど、洋風家屋には出っ張りが多い。これから寒くなる季節は羽織を着て出社するという。粋だなあ。

和の暮らしを楽しむブログより。
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