第18鉄 スハフ12形客車で行く紅葉の旅――わたらせ渓谷鐵道杉山淳一の +R Style(2/5 ページ)

» 2009年11月14日 07時00分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 定員制のトロッコ列車に乗りたくて、窓口で「トロッコ列車は空いていますか?」と申し出たところ「下りも上りも満席です」とのこと。平日とはいえ紅葉のピーク、やはり予約したほうがいいらしい。残念だが景色が大きく違うわけではないので、ディーゼルカーに乗った。左右どちらの座席の景色がいいかというと、神戸(ごうど)駅までは進行方向右側、そこから原向までは左側、さらに足尾までは右側だ。それぞれ渡良瀬川の渓谷に面した向きである。

進行方向右側の車窓(左)。進行方向左側の車窓。白御影石がきれい(右)

 しかし混雑した車内ではどちらかを選ばなくてはいけない。そんなときは左側がいい。渓谷に面する時間は短いけれど、神戸から原向までがもっとも美しい区間だ。紅葉のさまざまな色と針葉樹の緑、そして川には白い石が輝いている。この地域の特産の「白御影石」がゴロゴロしており、晴れた日は光り輝いて見える。これは他の地域にはない紅葉の景色。春や夏の緑との対比も美しい風景だ。他の区間の風景も絶壁あり、線路と谷の向こうの重なりに趣があるから、行きと帰りで両側の景色を楽しみたい。

神戸(ごうど)駅には列車レストランがある
11月9日から女性アテンダントが乗務している

宮脇俊三が国鉄全線完乗を果たした駅

 鉄道ファンにとってもわたらせ渓谷鐵道は見どころが多い路線だ。終着駅の間藤は山の中。駅とホームは整備されていて、運が良ければ山肌をカモシカが跳ねていく様子が見られる。駅舎の中には「時刻表2万キロの終着駅」というミニ展示がある。

 実はわたらせ渓谷鐵道の前身は国鉄足尾線である。中央公論の元編集長で、晩年は鉄道紀行作家として人気を得た宮脇俊三。そのデビュー作「時刻表2万キロ」で、宮脇が国鉄全線完乗の記録を達成した駅が間藤駅だ。当時の国鉄の総延長が約2万キロ。筆者を始め乗り鉄にとって宮脇俊三は神様のような存在で、この地を訪れるファンも多い。

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