あえて予想する「インサイダーで捕まる記者は必ず出てくる」と相場英雄の時事日想(2/2 ページ)

» 2009年11月26日 08時00分 公開
[相場英雄,Business Media 誠]
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起業を隠れ蓑に

 ここまで触れてきた案件は、非常にシンプルな構図だった。ここから先は巧妙な手口を紹介する。筆者がフリーになったばかりのころ、旧知の企画会社社長から声をかけられたことがあった。IR、投資家向け広報をサポートする会社を立ち上げるので、アドバイザーとして参加してほしい、という内容だった。

 当時、IRをサポートする専門会社の大半は大企業向けが中心だったため、「株式公開を控えた新興企業向けのサポートをウリにする」というふれこみだった。筆者に対しては、記者目線でのアドバイスがほしいとの要請があった。既に証券会社の営業幹部経験者や他のメディア経験者の人選も済み、新興企業向けIR会社は船出直前のタイミングにあった。後日、主要メンバーがそろった顔合わせのあと、酒席に繰り出したとき、筆者は起業の裏の顔を知ることになったのだ。主要メンバーの1人が仮名銀行口座や他人名義の証券口座の話をしているのを偶然耳にしたのだ。

 筆者が問いつめると、この起業のキモは、「顧客企業の内部情報を一般投資家よりも先に仕入れるための窓口」だったことが判明した。当時、複数の新興企業の経営者同士が互いの内部情報を手掛かりに違法な株式投資で多額の収益を挙げていたため、「これに倣った形で起業しようと試みていた」というのだ。悪質なインサイダーであることは明白。筆者が酒席をけって起業に参加しなかったのは言うまでもない(後に起業は頓挫した)。

 商売柄、取材を通して東証や証券取引等監視委員会のインサイダー摘発体制がどのようなものなのかは知っている。不届きなマスコミ関係者が想像している以上に、監視体制は充実していると断言できる。性善説に基づいた内規、そして「バレやしない」とタカをくくっていると、確実にパクられる。実際、筆者はこんな声を直接聞いている。「アナウンスメント効果が抜群に高いマスコミ関係者の動向は常に見ている」(監視委員会筋)――。

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