ポジティブシンキングの“罠”とは(1/2 ページ)

» 2009年12月01日 08時00分 公開
[伊藤達夫,INSIGHT NOW!]
INSIGHT NOW!

著者プロフィール:伊藤達夫(いとう・たつお)

THOUGHT&INSIGHT株式会社代表取締役、東京大学文学部卒、認定エグゼクティブ・コーチ(JIPCC)。コンサルティング会社にて食品、飲料、化学品メーカーなどのマーケティング寄りのプロジェクト、官公庁などのプロジェクトに携わる。その後、JASDAQ上場の事業会社に移り、グループ戦略、事業戦略、業務改革などに携わる。結果的に最年少でのマーケティング部門、部門長となる。ブログ「ゆるーいコンサルタントな日々


 入社した人が片っ端から既往歴が悪化するような過酷な職場環境からか、ある社員がちょっとメンタル不調に陥ったということがあります。まあ、具体的には言いたくないのですが、部下がうつとなり、非常に困った経験を持っているということです(彼は今、回復して元気に働いています。毎日飛び込み営業をやっているそうです)。

 そういった経験からか、セラピストの先生からお話をうかがったり、そういった類の本を読んだり、コーチング資格をとってみたり、といったことをしたので、多少のメンタルヘルスに対するナレッジはあります。

 安易に「ポジティブになろう!」という話は世の中的には減少してきたのでは? と思うのですが、いまだに「組織をポジティブにする!」というようなコンサルティングの宣伝文句を見かけます。信じるものは救われる世界だとは思いますけどね。いや、信じてワナにはまる世界だとも思います。

 組織の中で不自然に、誰かが前のめりにポジティブになると、必ず後ろ向きに引っ張る作用が起こります。あまり科学的でないことを承知で言いますが、前向きに突っ走る人の数だけ、「うつ」の人が出てバランスを取るように思います。心の綱引きというか、そういうことが起こっていると思います。

 うつが続出して困っている企業は、むしろ前のめりに突っ走っている人のカウンセリングに力を入れるべきなのでは? と思うんですね。組織のメンタルヘルスの平均値を上げることは重要だと思いますが、その際に、変にポジティブな人間にしようとすることで平均値を上げようとしても、上がらないと思います。

 1人の人間で見ても、ある時期にあまりに前向きにポジティブになろうとすると、後から強迫観念的になったりするということがあると思います。時系列である時期はポジティブだけど、ある時はネガティブ。周期的にそうなっていく。まるで躁鬱病のように。拒食と過食を繰り返すのと同じように。

 正確な科学的知見に基づいているというよりは精神論、感覚論になっていますが、メンタルヘルスで言われていることも非常にいい加減な世界です。心療内科に言っても、薬理でしか解決しようとしませんし。

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