住宅からビル・工場まで……直流配電は普及するか?エコプロダクツ2009(1/3 ページ)

» 2009年12月17日 17時57分 公開
[栗田昌宜,Business Media 誠]

 前年同期比2.7倍と、家庭への導入が急速に進む太陽光発電システム(関連記事)。家庭用燃料電池として注目を集め、今年の「第6回エコプロダクツ大賞」でエコプロダクツ部門の「環境大臣賞」を受賞した「エネファーム」。天候で発電量が大きく変動したり、夜間は発電できない太陽光発電システムの電力貯蔵用装置である家庭向けリチウムイオン2次電池。これらに共通するのは、いずれも発電や給電は直流で行っているということだ。

 一方、家庭内には直流で動作する機器が数多くある。PCやPC周辺機器、テレビや録画・再生機器、携帯電話などのデジタル機器は、外付けまたは内蔵のコンバータで交流を直流に変換して使用している。エアコンや冷蔵庫、洗濯機やヒートポンプ給湯器といったモーター駆動の機器や、蛍光灯や電磁調理器なども、インバータを搭載した機器の場合は、交流をいったん直流に変換し、さらにそれをインバータで目的の電圧や周波数の交流に変換して使用している。私たちは直流駆動の機器に囲まれて生活していると言っても、言いすぎではないだろう。

 現在、太陽光発電システムで発電した直流の電気は、パワーコンディショナーで交流の電気に変換された後、家庭内の電化製品で使われたり、使い切れない場合は電力会社の配電系統側に逆潮流(売電)されている。

 直流から交流、交流から直流への電力変換時には変換ロスが付きもの。例えば、太陽光発電システムで発電した電気をデジタル機器で使用するケースでは直流→交流→直流の2回、インバータ搭載生活家電のケースでは直流→交流→直流→交流と3回の電力変換が行われており、仮に1回の変換ロスが10%だとすると、2回の電力変換では19%、3回の電力変換では27%ものエネルギーを無駄にすることになる。

シャープの「ソーラーDCエコハウス構想」

 電力変換によるロスをいかに少なくして、家庭の省エネ化を進めるか――。それを実現する住宅内直流配電の取り組みを「エコプロダクツ2009」で展示していたのがシャープとパナソニックだ。ちなみにシャープと、パナソニックの電化設備機器系の子会社であるパナソニック電工は、「低電圧の直流配線と既存の交流配線を併用する住宅内システムの技術開発を行い、省エネルギー効果を実証」する、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「住宅内直流システム実証事業」の助成企業でもある。

 シャープは、2015年の住宅をモデルとした「ソーラーDCエコハウス構想」を展示。この構想は、屋根に乗せた結晶系太陽電気モジュールと、窓ガラスや天窓に取り付けた薄膜シースルー太陽電池モジュールで発電した電力を、直流配線で家庭内の電化製品に供給。それにより、変換ロスをなくすとともに、電化製品のエネルギー消費を家電情報ネットワークでスマートに管理することで、「CO2ゼロの生活」を目指すというものだ。

シャープが展示していた「ソーラーDCエコハウス構想」のシースルーモデルハウス(左)、「ソーラーDCエコハウス構想」の概念図(右)

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