求人募集の給与条件と実際の提示条件が変わる理由(1/2 ページ)

» 2010年02月02日 08時00分 公開
[増沢隆太,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:増沢隆太(ますざわ・りゅうた)

RMロンドンパートナーズ(株式会社RML慶文堂)代表取締役。東京工業大学特任教授、コミュニケーション戦略家。人事コンサルタント兼大学キャリア教官兼心理カウンセラーで、東工大大学院では「コミュニケーション演習」の授業を行っているほか、企業では人材にも「戦略性」を重視する功利主義的アクティビティを提唱している。


 私のように人生も半分を過ぎてしまった者には、もう今さら遅いのかも知れません。しかし若い方、これから社会に出る方、「キャリア」は一生ものです。後でキャリアは変えられません。給与条件と転職のギャップを考えましょう。

 会社員であれば、転職を考えたことが一度もない方はまずいないことでしょう。自分含め、転職や会社を辞める、ということが頭を過ぎる場合、その最も大きな要因は給料と言えるのではないでしょうか。例えば役職や昇進・昇格に不満がある場合でも、(あり得ない例ですが……)ヒラでも部長並みに給与が得られたらどうでしょう?職務内容への不満等も含め、かなりの不満は「お金」で解決できることは多いのでは、と思います。

 そのくらい大切なお金、つまり給与ですが、例えば求人票で「年収450万円〜600万円」と書かれていたので応募し、採用が決まったものの、雇用条件として提示された額は400万円だった、というような例もあります。なぜこのようなことが起こるのでしょうか。

 「企業にダマされた!」「最初からウソの給与レンジを出していた!」と怒る方もいるでしょうが、実は必ずしもダマすわけではないことも多いのです。採用をやっていると、特に昨今のような大不況下では、人気職では1人の採用に何十人、下手すれば100人を超える応募があります。

 ところが、これまで何千件もの採用に携わった経験から申し上げると、仮に100人の応募があっても、まともに採用社が求めるスペック(要求能力・経験条件)に合致する人は、感覚的に言えば1/3以下です。

 例えば「人材派遣会社コーディネーター募集。経験3年以上。想定年収350万円〜450万円」という求人があるとします。これに対し、大企業人事職の人や中小企業人事部長、営業マンやショップ店員の方などさまざまな応募が来ます。

 「経験3年以上」と書いているからには、やはり採用社は人材派遣業の経験者、それも3年以上ある方を想定しています。ベテランがNGかどうかはその求人によっても違いますが、派遣業ではない人事をいくら何十年経験していても、「派遣コーディネーター」募集には普通はマッチしません。

 一方、こういう募集で未経験の営業マンやショップ店員の方が採用されることは特に異常なことではありません。ただ、「想定年収350万円〜450万円」とあるのに、提示された年収は300万だった、というのはこういう時に起こります。あるいはコールセンターSV(スーパーバイザー)経験は5年あって、派遣コーディネーターは1年半などでもありえます。

 求人スペックに合わない、満たない方を採用することは何も珍しい話ではありません。特に経験よりセンスを重視するのは、昨今のコンピテンシー重視の採用プロセスではより顕著になっています。「企業がダマしてる」のではなく、採用基準に満たないが採用するので、想定条件より下がっている、というのが一番多いと言えるでしょう。

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