ドキュメンタリー映画『TOKYO TO OSAKA』が伝える“ピストバイク”の魅力郷好文の“うふふ”マーケティング(1/2 ページ)

» 2010年04月08日 08時00分 公開
[郷好文,Business Media 誠]

著者プロフィール:郷 好文

マーケティング・リサーチ、新規事業の開発、海外駐在を経て、1999年〜2008年までコンサルティングファームにてマネジメント・コンサルタントとして、事業戦略・マーケティング戦略など多数のプロジェクトに参画。2009年9月、株式会社ことばを設立。12月、異能のコンサルティング集団アンサー・コンサルティングLLPの設立とともに参画。コンサルタント・エッセイストの仕事に加えて、クリエイター支援・創作品販売の「utte(うって)」事業、ギャラリー&スペース「アートマルシェ神田」の運営に携わる。著書に『顧客視点の成長シナリオ』(ファーストプレス)など、印刷業界誌『プリバリ[印]』で「マーケティング価値校」を連載中。中小企業診断士。ブログ「cotobike


 自転車でどのくらいの距離を走りますか?

 自転車に乗り始めた時のこと、補助輪を外し、後輪の荷台を支えてもらい、右に左に傾きながら、遂に支えなしで走れるようになる。感動の一瞬。「自由だ、どこまでも走ってゆける!」というあの感覚。距離にしてせいぜい100メートルだが、偉大な100メートルだった。それから走行距離を1キロ、2キロと伸ばしていくが、たいてい5キロ止まりでそれ以上は走ることは珍しい。さらに、子どもができると子ども運搬用になってまた2キロ程度に逆戻り。

 ローティーンの私は比較的長い距離を走った。実家のある池袋から自転車で高田馬場へ、しばしば新宿へ、まれに渋谷まで明治通りを上り下りした。交通費を浮かして、名画座のハシゴ。ごくフツーのチャリでよく走った。ところがそんなスケールを超えて、“渋谷”から“大阪”まで、一気に1週間で走り抜いた13人の男たちがいる。それも“ピストバイク”で。

 13台の自転車が箱詰めで米国から到着。渋谷の街頭で、男たちがバイク(自転車)を組み立てるスリリングなシーンからその映画は始まる。フレームにタイヤを付け、ハンドルやサドルをセット。よく見ればどれも“フィックスド(固定)ギア”なのだ。

 ギアは前後2枚(変速なし)、ネイキッド(裸)なフレーム、シンプルなハンドル(ブレーキ1つも見かける)。常にペダリングして走る、走る間はペダルが回る、つまり競輪選手が乗るようなプロ自転車、それがピストバイクだ。フィックスドギアはその英語表現(ピストは仏語で“競技場”の意味)である。バイクを組み上げると、一斉に渋谷の街頭を走り出す。ぞくぞくするシーンだ。

※前後輪にブレーキをつけていない形での自転車走行は道路交通法違反となります。ピストバイクで公道を走る際には、必ずブレーキがついた状態で走ってください。

東京から大阪までピストバイクで

 13人のピストバイクに乗る若者たちのドキュメンタリー『TOKYO TO OSAKA』。エキサイティングな自転車ロードムービーだ(2010年6月米国で公開予定)。

撮影:Jason Lam

 「なぜ東京から大阪? なぜ日本で“フィックスドギア”の自転車映画を撮影したんですか?」、監督のNick Hillさん(28)に聞いた。

 「外国で自転車ツアーをしようと思って、まず日本だなと。日本のバイク文化にひき付けられたのさ。フィックスドギアの原点である、日本の競輪やレースにも興味があったね。それを直で見たかったんだ」

 13人(監督自身を含む人数)のバイク好きな男たちが、東京から大阪まで、海岸沿いの道を1週間で350マイル(560キロ)走り抜けた。渋谷から国府津へ、富士、御前崎、田原、そこからフェリーにバイクを積んで海を渡り鳥羽へ、伊賀、起伏のある奈良、歓喜の大阪へ。バイクのスピード感が満ちあふれ、笑顔もあれば疲労もある。出会いがあり喝采がある。そして何より表情がいい。

『TOKYO TO OSAKA』トレイラー

Tokyo to Osaka Teaser from John Murillo on Vimeo.

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