さらに、前述の「“できる人”〜ゆかないのである」までをもう1度、読んでいただきたい。この意味するものを心得ると、冒頭で述べたエピソードをこれまでとは違ったまなざしで見ることができるのではないだろうか。つまり、早稲田大学出身の副編集長は、20数年前の大学受験という競争で一応、“勝利者”になった。そして、就職戦線では“潜在的な能力”を持っていると“想定”されたわけである。
しかし、いざ会社に入り20年ほどが過ぎると、その想定は誤りであったのだ。大学受験の“勝利者”とは言い難い、日大OBがいち早く昇進した。岩田氏の言葉で言えば「“能力”を発揮すると期待されて」いない人がブレイクして、編集長になったのである。
早稲田大学OBの副編集長は、この現実を素直に受け入れることができないがために「彼は、日大しか出ていないのに……(苦笑)」と愚痴をこぼすのである。彼自身、日本的な能力観にかなり影響を受けていると見ることができる。
ここまで読むと、読者の中には「俺は偏差値の低い大学だから……」などと、それこそ日本的な能力観にしばられて、ふてくされる人がいるかもしれない。会社員の人は、同じ会社の東大出身者らを見て、劣等感を感じるのかもしれない。大学生は就職活動で期待はずれの結果が出ると、つい「やはり、自分は〇〇大学だから……」と思うのかもしれない。これらもまた、日本的な能力観の悪影響である。
いまは、日大OBが早稲田OBを打ち負かす時代である。「“能力”を発揮すると期待されて」いない人たちに、私は心からエールを送りたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング