“偏差値神話”は本当なのか 日大が早稲田をアゴで使うとき吉田典史の時事日想(1/3 ページ)

» 2010年04月16日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

著者プロフィール:吉田典史(よしだ・のりふみ)

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2005年よりフリー。主に、経営、経済分野で取材・執筆・編集を続ける。雑誌では『人事マネジメント』(ビジネスパブリッシング社)や『週刊ダイヤモンド』(ダイヤモンド社)、インターネットではNBオンライン(日経BP社)やダイヤモンドオンライン(ダイヤモンド社)で執筆中。このほか日本マンパワーや専門学校で文章指導の講師を務める。

著書に『非正社員から正社員になる!』(光文社)、『年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術』(同文舘出版)、『あの日、「負け組社員」になった…他人事ではない“会社の落とし穴”の避け方・埋め方・逃れ方』(ダイヤモンド社)、『いますぐ「さすが」と言いなさい!』(ビジネス社)など。ブログ「吉田典史の編集部」


 「彼は、日大(日本大学)しか出ていないのに……」

 1カ月ほど前、大手出版社の副編集長(44歳)と赤坂で酒を飲んだ。そのとき副編集長はハッキリとこう言った。「彼は、日大しか出ていないのに……(苦笑)」

 この場合の“彼”は、2歳年下の後輩を意味するらしいが、この春の人事異動で編集長に抜てきされたようだ。一方で、早稲田大学出身のこの副編集長は、昇進できなかった。つまり、後輩に負けたのである。だから、酔った勢いでつい「日大しか……」とバカにしたのだろう。

 会社員として30代後半〜40代後半までの約10年間は、大きな分岐点になる。その後、役員などになるか、それとも管理職で終わっていくかという、2つの道が待ち構えている。最近は、管理職にもなれない3つ目の道が作られている。

 この時点で競争に負ける人は、人事について不満が多くなる。そんなときに、彼らがよく口にするのが「〇〇大学しか出ていないのに……」といった言葉である。さすがにしらふのときは口にはしない。酔ったりすると、ハッキリと言う人がいる。

 そのような人は私の周りに10〜15人ほどいる。「あいつは立教なのに……」「まあ、中央しか出ていないから、彼は必死にがんばったんだろうね」など。いずれも早稲田大学や慶應義塾大学、東京大学出身の編集者たちである。この人たちは現在、副編集長(課長級もしくは課長補佐)などをしているが、その上の編集長(課長級もしくは部長級)になるのが遅れている。会社から十分には認められていないのだ。彼らはそのことを察知しているから、自分を追い抜かす人を冒頭で紹介したように「日大しか……」とバカにするのだろう。つまりは、嫉妬(しっと)である。

 時おり、「学歴なんて関係ない」と勇ましいことを言う人がいる。しかし、私が取材していると、学歴や競争、さらに能力観などはそれなりに日本社会に影響を与えていると思う。そこで今回の時事日想は、企業の中で学歴がどういう意味を持つかを考えてみたい。

 だが多くの企業は、社内の昇進などに学歴がどのくらい影響を与えているかを公表していない。私が知る限り、そのようなデータは存在しないし、取材で人事部に尋ねてもあいまいな回答しか返ってこない。従って、私がこの20年ほどの間に学歴について書かれた本を読んできた中で、もっとも説得力があると思ったものをベースに論を進めたい。

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