貧困ビジネスとは何か? 低所得者を喰う者たち(後編)(1/3 ページ)

» 2010年04月16日 08時00分 公開
[土肥義則,Business Media 誠]

 仕事や家を失い、人間らしい生活を送ることができない人たちが増えてきている。日本社会に広がる貧困ビジネスに対し、NPO法人「もやい」の事務局長を務める湯浅誠氏はどのように見ているのだろうか。

 →貧困ビジネスとは何か? 低所得者を喰う者たち(前編)

湯浅誠(ゆあさ・まこと)氏のプロフィール

1969年生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程単位取得退学。1995年より野宿者(ホームレス)支援活動を行う。2001年5月、NPO法人自立生活サポートセンター「もやい」設立、事務局長就任、2007年10月、反貧困ネットワーク設立、事務局長就任

著書に『本当に困った人のための生活保護申請マニュアル』(同文舘出版)、『貧困襲来』(山吹書店)、『反貧困 「すべり台社会」からの脱出』(岩波書店)などがある。


※本記事は日弁連シンポジウム「貧困ビジネス被害を考える〜被害現場からの連続報告」(4月12日開催)で、湯浅氏が語ったことをまとめたものです。

拡大している貧困ビジネス

 かつて飯場(はんば:建設現場などの労働者のために、現場付近に設けられた宿泊設備)と呼ばれる職住一体型の建設現場は、人里離れた所でひっそりと立っていた。そして飯場の供給源になっている、いわゆる寄せ場(青空労働市場)という日雇い労働者の町は全国に数えるほどしかなかった。なので飯場や寄せ場というのは、一般社会と隔絶している存在だった。

 しかしいまは飯場的な業者が増えてきていて、それは悪質な人材派遣会社や不動産会社であったりする。彼らは職住一体型の貧困ビジネスを行い、低所得者からお金をむしり取っているのだ。職住一体型の特徴は労働の現場だけではなく、生活をも押さえているということ。寝起きそのものが搾取の対象になり、高い賃料、高い光熱費、現場までのバス代、ベッド代、テレビ代、冷蔵庫代なども請求される。つまり人間の生活、一挙手一投足に対し、お金を巻き上げていくのだ。

湯浅誠氏

 こうした職住一体型の貧困ビジネスが全国的に広まっているが、このことは何を意味しているのだろうか。かつての日雇い労働者は寄せ場にいたが、いまではそうした貧困状態にある人が社会全体に広がっているのだ。このような“日本社会の寄せ場化”によって貧困ビジネスも社会の陽の当たる場所に出てきた、と言えるだろう。

 例えば保証人代行を行っている貧困ビジネスがあるが、10年前であればこういった会社は駐車場に「保証人になります」といった看板を掲げていた。つまり保証人代行ビジネスは捨て看板のような存在でしかなかった。しかしいまや保証人代行を求める人は増えていて、一定規模の市場を形成している。こうした現象の背景には、政府が行ってきた規制緩和があるのだ。

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