なぜ30代前半になると、“ゆきづまって”くるのだろうか吉田典史の時事日想(3/4 ページ)

» 2010年04月30日 08時00分 公開
[吉田典史,Business Media 誠]

 下田氏が指摘するように、このような思考停止状態になると、それまでの経験にしがみつくようになる。当時の私の心理はきっとこんなものではなかったのかな、と思う。「これだけ頭ごなしに否定されるならば、せめてこの10年ほどの経験をもとに上司に対し、反論をしよう」。つまり、自信のなさの表れとも言える。こうして私はだんだんと上司への攻撃心を強めていったのだ。

 だが、こういうケースは少ないだろう。多くの人は「もうこんな上司はダメだ」とか「会社員ってこんなものか」とあきらめや悟りの境地に入っていくのではないだろうか。そして失意のもと、退職する。さらにエスカレートすると、心の病になることもあるのかもしれない。私が観察していると、そのように思える。

 もちろん、上司の関係からだけで思考停止状態に陥るわけではないだろう。会社の人事制度があまりにも年功序列的であり、何をしようと同世代と差がつかないときにも、思考停止になるのかもしれない。あるいは、職場の同僚や取引先などとの人間関係が影響を与えているのかもしれない。

 しかし、私は自らの経験を振り返ると、上司との関係が大きいのではないかと思う。言い方を変えると、人は自分の可能性を否定され続けると、見事に思考は停止するのである。新しいことに取り組む意欲もなくなる。

周囲に感謝する姿勢を保つこと

 では、この状況から抜け出すためにはどうするべきか。下田氏は「簡単なことではない」と前置きしたあと、「周囲に感謝する姿勢を維持すること」を説く。上司や周囲などに感謝することが過去の成功体験にしがみつく姿勢を打破することになる、と考えているのだ。このような上司に感謝することができるのかと疑問を投げ掛けてみると、こう答えた。

 「逆転の発想ですが、まず感謝しようとすると、感謝するためのネタを探す思考が働き、その結果、周囲が尽力してくれたさまざまなことに気づく」

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