ポイントは“本業”を通じた環境経営――ゴールドウインの自転車通勤制度(1/2 ページ)

» 2010年05月14日 08時00分 公開
[中ノ森清訓,INSIGHT NOW!]
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著者プロフィール:中ノ森清訓(なかのもり・きよのり)

株式会社戦略調達社長。コスト削減・経費削減のヒントを提供する「週刊 戦略調達」、環境負荷を低減する商品・サービスの開発事例や、それを支えるサプライヤなどを紹介する「環境調達.com」を中心に、開発・調達・購買業務とそのマネジメントのあり方について情報提供している。


 スポーツウエアメーカーのゴールドウインが、エコ通勤の促進を目的に、自転車を正式な通勤手段として認める社内制度を始めました(出所:同社プレスリリース)。同社は「GOLDWIN」「SCOTT」の2ブランドで、自転車や自転車関連商品を販売しているので、エコ通勤の促進として自転車通勤の促進に取り組むことにはストーリー性や説得性があります。

 最近、企業の社会的責任を問うCSRや、社会問題や環境問題などへの取り組みをマーケティングや商品・サービスの販売に活用するコーズマーケティングが取りざたされ、さまざまな社会貢献活動に取り組む企業やカーボンオフセット商品やNPOなどへの寄付付き商品などを出す企業が出ています。

 しかし、それらの中には、「なぜその会社がそうした取り組みを行なうのか」と感じるほど関連性が見えず、「その前にもっとやるべきことがあるのでは?」と疑念を持たざるをえないケースが多々あります。

 カーボンオフセット商品を例に取ると、まだまだ自社でCO2を削減できるだろう企業が、そうした努力を行わず、安易に排出権を買って、いきなりカーボンオフセット商品を出しても、まったく魅力を感じません。

 そもそも、CO2削減と環境負荷低減はまったくイコールの関係にあるわけではないので、排出権を活用したCO2削減については、その目的の優先順位付けが果たして正しいのか、いまだに疑念を感じざるをえません。

 企業は、社会にある問題の解決や新しい価値の提案を事業として行い、それらを顧客から認めていただくことで利益を上げ、その利益を次の問題解決や価値提案に向けて再投資することで継続して社会に価値を提供していくのが存在意義です。

 「本業から離れたCSR活動で社会に貢献する」というのは、企業にとっては副次的活動であり、副次的であるがゆえに中途半端な形で終わってしまいがちです。本気で社会貢献したいのなら、その活動を主目的とした企業、NPO法人などの団体を組織して取り組まなければ、実のある成果を上げることは難しいでしょう。

 利益と社会正義という、時には二律背反するような目的を、脈絡もなく同時に複数並べては、顧客や社員からの求心力が得られないどころか、言っていることとやっていることが異なっていたり、社会貢献活動や環境負荷低減の活動が全事業活動のうちの微々たるものの時には、「きれいごとばかり並べて」と顧客や社員からの反発やシラケを生み、逆効果にすらなってしまうこともあります。

 こうした反動を考えると、いくら世の中のためになることであっても、中途半端な活動ならばやめた方が良く、やるなら徹底してやる。徹底してやる覚悟がない、できないならば「やらない」とはっきりさせた方が、経営にとっては効果的です。

 そうした意味では、自転車や自転車関連用品ブランドを持つゴールドウインがこうした取り組みを行うというのは、説明が付きやすく、顧客や従業員にとってもストンと腑に落ちます。

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