ミラノサローネ2010、パナソニック電工の「全体快適システム」(1/2 ページ)

» 2010年05月21日 08時00分 公開
[本間美紀,エキサイトイズム]
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※この記事は、エキサイトイズムより転載しています。


 黒をベースにした空間に、ナチュラルブラウンのスリットが立ち並ぶ。照明やトイレやキッチン。一体ここは何を見せているのだろうか、と足を止める人も多かったに違いない。

 実はここ、パナソニック電工の展示会場「(standard)3(スタンダード3乗)−smart」。ミラノサローネではすっかり展示の常連となったパナソニック電工だが、今年は「モノを見せるのではなく、次世代のシステムを見せる」と新しい試みに挑んだ。テーマは「全体快適」。

 専業制の強い欧州の企業と違い、パナソニック電工のように住宅建材、家具や住宅設備、制御システム、電材と、1つのメーカーが幅広く商品や技術を持てることは世界的にも珍しい。さらにこれらをシステムでつなぐ技術も進化している。

 総合力をどう表現するかが、ミラノ出展における同社の深いテーマだった。これまで照明やキッチン、バスなど、製品カテゴリーで見せていたその哲学を今年は思い切って逆の発想に転じた。イタリア人デザイナー、マルティノ・ベルギンツ氏が手がけた空間は「現代の洞窟」。ここに同社の10製品が散りばめるように展示されている。

マルティノ・ベルギンツ氏

 まず会場は、同社のエコ建材「ケナボード」で構成。CO2を吸収し、成長の早い植物ケナフで作られた構造用壁下地材だ。この荒々しい表情を空間デザインに生かしたのが、ベルギンツ氏のアイデア。吸湿性もすぐれたこのボードが空間の心地よさにも一役買うという。

 ショーウィンドウにはシンプルな丸い玉の電球で、スタンダードを目指す「MODIFY(モディファイ)」の展示(新作のφ510mmも登場)が印象的。

 入ってすぐの場所には、面として使える光「有機EL照明パネル」がリズミカルに並ぶ。一見、ただ並べただけのようだが、裏の配線や技術的な仕組みには同社の技術者の苦労の賜物。最新技術をデザイン的な見た目と両立させるのには大変な苦労があると学んだ、というユニークな発言も聞かれた。

 照明などの展示のほか「距離画像センサ」という、人の動きをリアルに感知するセンサーも発表。これはリモコンやタッチパネルの先を行くもので、今後、デジタルサイネージ(電子看板)や人数カウントなど多くの分野で応用が期待される。

距離画像センサ本体とその出力画面

 こちらは一見、白いパネルが立っているだけ。一体どんなものかと聞いてみると、厚さわずか70ミリの中に「ナノイー」や脱臭、調湿技術を詰め込んだパネル。自然の調湿を行う、現代の土壁といえる。

 またタンクレストイレ「アラウーノ」やシステムキッチン「リビングステーション」の試作などが、まるでオブジェのように空間に並んだ。

 以上、こういったすべての「モノ」はただ並べているのではなく、これらを制御するシステム「ライフニティECOマネシステム」でネットワーク化。会場の画面ではそれを確認できる仕組みだ。

 展示のオープンに先駆けて、パナソニック電工製品のデザインやコンセプト監修などを務めるデザイナーの深澤直人氏も駆けつけた。テクノロジーを表に出さず、エネルギー制御から空間の快適性までを美しくスマートに導く、同社の提案の重要性についてコメントした。

深澤直人氏

 ただ見る、眺めるだけではなく、一歩踏み出してコミュニケーションすると、住まいの将来が見える。見た目のデザインに走る展示も多い中で、この深いコンセプトは世界にどう受け止められたのか? その結果を反映して、来年の企画にも期待したい。

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