インタビュー
» 2010年05月28日 08時00分 公開

批判されても、批判されても……貧困ビジネスに立ち向かう理由35.8歳の時間・湯浅誠(5/6 ページ)

[土肥義則,Business Media 誠]

批判は同じ内容ばかり

写真と本文は関係ありません

 活動を始めたときから、同じような批判がいまだにありますね。ホームレスの人たちを「甘やかしてどうするんだ」「本人のためにならない」「そんなことをやるんだったら、自分の家に連れていけばいいじゃないか」「税金がムダになる」――。こうした批判があることは分かっているのですが、やはり相手との“接点”を増やすしかないと思っています。

 偏見というのは理屈で説得できるときもありますが、やはりなかなか難しい。例えば「オレは生活保護を受けながら、パチンコばかりしている奴を知っている」といった指摘があります。しかしこの人が知っているのは、1〜2人のみ。わたしはこれまで何万人もの生活困窮者と接してきているので、そういう人はごく一部しかいないことを知っています。ただ人間というのは自分の経験の範囲でしか物事を考えられませんから、説得するのは難しいですね。理屈で説得できるのは限界があるので、やはり批判する人たちとホームレスの人たちが出会う場を作ることが大事だと思っています。

 中高生が炊き出しを手伝ってくれたりすると、8〜9割の生徒さんは同じようなことを言います。「なんだ、普通のおじさんじゃないか」と。会う前はホームレスに対するいろんな偏見が膨らんでいるので「なにを考えているのか分からない」「お酒におぼれて、とんでもない奴ら」といったイメージが膨らんでいます。しかし実際に話してみると、自分の親父とあまり変わらないことが分かったりする。そこで「なんだ」と思うわけですが、その「なんだ」と思うことが大切なのではないでしょうか。

財産は「人」

 わたしの財産は「人」。活動というのは人――それ以外にありません。お金はもうかりませんし、権力を手にすることもできませんし、権威も付きません。なので、わたしにとっての財産は人ですね。ただ自分に人を引き付ける力があるとは思っていません。繰り返しになりますが、わたしは相手との接点を見い出そうとしているだけ。ただし、こちらが接点を見い出そうとしても、相手にその気がないと無理。お互いが接点を見つけようとすることで、なんとかこれまでやってきたといった感じですね。

 活動を続けている理由ですか? それは2つの理由があります。1つは「面白い」ということ。例えばホームレス問題や貧困問題というのは、これまであまり問題視されなかった分野。自分たちがやっていくことで道ができていく――つまり新しい道を作る面白さがありますね。もう1つは日々相談を受けていると、あまりにもひどい話がたくさんあって、そういうものに対する“怒り”があります。せっかく1人の人間として生まれてきたのに、なぜヒドイ目に遭わなければいけないのか。そのような世の中は生きにくいと思うので、わたしには“おかしいな”という怒りがあります。

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