インタビュー
» 2010年05月28日 08時00分 公開

批判されても、批判されても……貧困ビジネスに立ち向かう理由35.8歳の時間・湯浅誠(4/6 ページ)

[土肥義則,Business Media 誠]

真面目に働いても貧困に

 35歳(2005年)のときには、『あなたにもできる! 本当に困った人のための生活保護申請マニュアル』(同文舘出版)という本を出しました。そのころ、全国から相談がきていましたが、地方の人に「東京へ来い」とは言えません。「議員に頼まなくても、生活保護の申請ができるように」と思い、書きました。あと本を出したことで、人脈が広がりましたね。それまでホームレスの人たちやボランティア活動をしている人たちとの付き合いが中心だったのですが、本を出してからはさまざまな分野で活躍している人たちと知り合うことができました。

 そして36歳のときには「貧困ビジネス」という言葉を考えました。多重債務者、生活保護受給者、派遣労働者、自殺者、ホームレス――これらの問題にはすべて貧困が潜んでいます。貧困を再発見してみると、悪質なビジネスが貧困層をターゲットにして利益を手にしていることが分かりました。こっちを見つければ、こっちも見つかったといった感じで。

 それまで貧困についてはあまり目を向けられていませんでしたが、「ワーキングプア」や「キヤノンの偽装請負問題」が報じられるようになって、世の中の動きが変わってきました。さらに貧困に目を向けてみると、「北九州市の餓死事件」「人材派遣会社グッドウィルのデータ装備費問題」「ネットカフェ難民」といった問題が浮き彫りになりました。それでも政府や大メディアは「生活が苦しくなったのは自分たちのせいだ」といった見方が強かったですね。いわゆる“勝ち組”の人たちが集まる組織なので、貧困問題を理解できなかったのかもしれません。

 ところが2008年、派遣切りによって多くの人が会社を解雇されました。この問題が起きたことによって「真面目に働いていれば、貧困者にはならない」と言えなくなってしまった。どんなにちゃんと働いていても、クビになるときにはクビになってしまう――。このことがハッキリしてしまったので、それまで「生活が苦しくなったのは自分たちのせいだ」と言っていた人たちが黙ってしまった。そして「派遣という働き方でいいのか?」「セーフティーネットのあり方はこれでいいのか?」といった議論ができるようになりましたね。

 「真面目に働いていれば、貧困者にはならない」という理屈は、“社会は何もしなくてもいい”ということを正当化するために使われます。この理屈で政治家は乗り越えようとしていたのですが、さすがに言えなくなってしまいましたね。

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